唯一の娘-1-

セシル達はミシディアで「竜の口より生まれし」魔導船を手に入れて、ゴルベーザがいると思われる月へ魔導船で旅立った。
が、セシルとエッジは「星を離れる」なんていう大それたことに、自分達がとても大事に思っているローザとリディアを連れて行くわけにはいかないと思っていた。
泣かれても、怒られても。
何があったって、それは譲ってはいけないと二人の意見はとてもめずらしく一致して。
覚悟を決めて二人を置いてきた・・・つもりであったのに。

「バカだなあ、お前ら」
月の地表に出てエッジは言う。
「バカはそっちでしょ」
リディアは答える。
魔導船の中にセシルとローザを置いてきた。リディアはローザの気持ちが痛いほどわかる。
バロンから旅立ったセシルの消息が途絶えて。ローザは単身で砂漠を渡り、病に倒れた。
それをセシル達に助けてもらったと思ったらさらわれて長い間監禁されていた。
「もう二度とあんな思いはしたくないって、ローザは言ってた」
離れ離れになるのは、もう嫌。
ローザの言葉はとてもよくリディアにはわかって。
二人はそーっと魔導船に隠れて乗って、月までついてきてしまったのだ。
「ふうん」
月についてから姿をあらわして、セシルとエッジをびっくりさせた。セシルが二人を叱りつけ
ようとした瞬間、ローザはセシルに抱きついたのだ。・・・そうなってしまったら、もう怒ることが出来るわけがない。
ちょっとの間、二人っきりにさせてあげようよ、とリディアが気を利かせてエッジをひっぱって外に出たのだ。
「第一、なんでお前までついてくるんだよ」
「なんで?当たり前じゃない、仲間だもん」
「仲間あ?んなこといったって、足手まといなんだよっ」
「嘘ばっかり。わたしたちだけ安全なところにいるなんて出来ないよ」
「出来るも出来ないもねーっての」
そういいながら、産まれて初めてたどり着いた月の地表をエッジは見渡した。
薄暗くて、見渡す限りクレーターがある。ここに人がすめるのかと思えるほど何もない地表。
自分達の星が青かったことは魔導船から見てわかっていたし、この星に緑がないことは着陸前からわかっていたことだ。あまりにも違う星。
息が出来るとわかってはいたけれど、ちょっと外に出る勇気が出なかった。
それを躊躇しないで引っ張り出したリディアの勇気というか無謀さには頭があがらないな、とエッジは思う。
「それに、わたしはセシルの役に立ちたくて幻界で頑張ってきたのに、最後までいさせてもらえないなんて、ひどいよ」
「・・・そーかよ。勝手にしろ」
リディアの言葉にエッジはむすっとして唇をちょっと尖らせた。
「エッジだって同じことされたらヤなくせに〜」
「だ・か・ら、勝手にしろつってんだろ」
「まだ怒ってるの?」
「・・・怒ってねえよ」
エッジは魔導船によりかかった。この表面が宇宙に触れていた部分なのだと思うとなんだか不思議な気がする。
「怒ってないなら、いいけど」

4人は地表をよく見ながら魔導船で月を探索した。
陽気に歌を歌っているハミングウェイという一族が住んでいる集落をみつけ、とりあえず文明がある場所が確認出来たことでほっとした。
それから彼らは、短い通路のようになっている洞窟と、広くてどこまで続いているのかあやしい洞窟の二箇所を見つける。
どっちにいこうか?とセシルは3人に相談をした。
セシルは、短い通路のようになっている洞窟に呼ばれているような気がする、と言った。多分それは当たっているのだろう。
「じゃあ、そっちいくか。お前のそういう勘をここでは信じたほうがいいような気がするしな」
そういってエッジは舵をとろうとする。
「待って」
が、めずらしくそのときリディアが困ったような表情で声をあげた。
「んん?」
「ごめんなさい。あの、あのね、わたし・・・」
「どうした。トイレか」
「バカっ!!違うもん!」
「エッジ」
セシルがたしなめるようにエッジを見る。当の本人は涼しい顔だ。
「なあに、リディア」
「あのね、わたし、あっちの洞窟に、何か、呼ばれているような気がするの・・・」
「なんだよ、セシルが間違ってるってのか?」
「違うってば!どうしてエッジってそう短絡的なの?」
かなり年下のリディアに「短絡的」と言われてエッジは苦笑する。
「なんだか、私を呼んでいる気がするの」

滅多に自分からここにいこう、あそこにいこう、と口には出さないで「セシルに任せたよっ!」と明るく
言うリディアがそんなことを言うとは。
セシルは驚きながら、その意見を受け入れた。
確かに一刻を争うことかもしれないけれど、どちらが正しいのかなんてわからない。
4人は月のとある洞窟に入り込んだ。
あたりは薄暗いけれど、どうやらところどころ光苔のようなものが生えているらしい。それが彼らが唯一わかった植物だった。
「やっぱり中にも全然草花なんかねえんだなあ。ほらよ、ローザ、アルテミスの矢」
「あら、また盗んでくれたのね。うふふ、エッジったら絶好調じゃない」
「女性モンスター相手だと張り切っちゃうんだわな」
といって笑う。
「やあね!エッジったら」
ローザも矢を受け取って笑った。
「何本くらいある?足りなかったらもっと盗るぜ?」
ローザは足を止めてアルテミスの矢を矢筒から出して受け取った分を合わせて数え始めた。エッジがそれを覗き込む。
「腕があがってるんじゃないか、エッジも」
その二人の様子を見てセシルは小さく笑ってリディアに言う。
本当はあたりにモンスターの気配はあって、そんなに呑気なことを言っていられる場所ではないことはわかっている。けれど、彼らはもうそれも慣れたもので、決して必要以上に離れること無く、何があっても対処出来る距離を保ちながらちょっとした気の抜けた会話を出来るくらいには経験を積んで来ていた。
「そうみたいだね。よくあれだけモンスターの至近距離にいけるよねー」
「細かいところで頼りになるな、エッジは」
「そう思ってる?」
「ああ。・・・リディアはどう思ってる?」
「うーんと・・・エッジがいると、なんとなく前向きになれて嬉しいと思う」
「うん。僕もそう思う。リディアとエッジには助けられているよ」
そういってセシルはぽんぽんとリディアの頭をたたいた。それはリディアが小さかった頃からセシルがよくやってくれていたコミュニケーションだ。成長してもセシルは変わらずにそっとリディアの頭を軽く叩いてリディアをちょっぴり嬉しくさせてくれる。
「セシル、もしこの洞窟に何もなかったら、ごめんなさい」
「いいよ。気にしなくて。どっちにしたって調べるつもりだったんだし」
「よかったあ〜!」
リディアはそのセシルの言葉にほっとして笑顔を見せた。

銀竜や金竜との戦闘でかなりダメージはうけたものの、彼らは洞窟の最奥らしきフロアに出ることが出来た。
「なんだ、妙にここは広いな」
広い、というと語弊があるようだ。フロアの表面積はそうでもない。ただ。
明らかに他の階と天井の高さが違う。この階に降りる為に出来ていた、坂にちょっとした凹凸がついただけの天然の階段は確かに他の階に比べるととても長かったように思える。
「・・・・あれは」
リディアは立ち止まる。
「誰かが、いる」
セシル達は洞窟の奥に人間の姿を見つけた。相手はセシル達がこの洞窟に侵入していたことを知っていたのかとりたてて驚いている気配も警戒している気配もない。それが妙にセシル達には不安感を与えた。
一人の男が立ってまっすぐとセシル達を見ていた。その体はフードつきの長い黒っぽいローブに包まれており、見た目は若く見えた。褐色の肌、白銀の髪に黄金の瞳。こころもち長い耳がエルフのようにも見える。
その両脇にフードをかぶった、見た目は魔道士のような若者二人がそっと立っていた。
「あなたは・・・」
セシルが声をかけようとした。けれど、相手の視線が自分を見ていないことに気づいて言葉を止める。その視線は。
「リディア」
エッジは後ろからリディアの肩を掴んだ。びくっとなってリディアは不安そうに振り向く。
「な、なに?」
「・・・なんなんだよ、やつは?どうしてお前を見ているんだ」
「・・・あの人は・・・」
そしてまた視線を前に戻すと、真っ向からその男性の視線とぶつかった。リディアは震える声で言った。
「私はミストの村のリディア。あなたは・・・?」
「身分をわきまえて控えなさい!この方は・・・」
男の左側にいた従者のような若者が声をあげた。それへ、その金の瞳をもつ男性は手をあげて制する。
セシル達は立ち止まって、その場でその男が何をいうのかを警戒してただ見つめるだけだ。
「この地に青き星の人間が来るとはな。しかも、召喚士が」
リディアは目を見開いた。
一言もそんなことは言っていないのに。
「私の力が必要なのか」
「・・・あんたは、誰だ。俺は、エブラーナの王子エドワード・ジェラルダインだ。・・・これで、あんたも名乗ってくれるんだろ」
「私はこの地から幻獣達を見守る者だ。・・・娘よ、私の力が必要か」
どくん。
リディアは鼓動が早くなっていることに気づいた。
これは、知っている。
「私、あなたを知っている気がするの。そんなこと、ないのかなあ?」
「・・・多分、それは半分正しくて半分間違っている」
幻界で幻獣達について書かれている本を読んだことをリディアは思い出していた。多分、彼は。
「でも、もしあなたが、私が考えているモノだったら、どうして私、あなたを知っている気がするのかしら」
「それは、お前の母を思い出せばわかることだろう」
「お母さんを知っているの・・・?」
「私が直接知っているわけではない」
セシルはリディアを見た。
「リディア、一体・・・」
リディアはまばたきをしないでその男を見ていた。
「んだよ、何意味深なこと言ってんだ。もっとわかりやすいように会話しろよ!ごちゃごちゃ言いやがって」
そうエッジが叫ぶと、先ほど制された男とは違う、反対側の従者が凛とした声で言う。
「静かになさい。この方を侮辱するような言葉はあなた自身に災いをもたらしますよ」
「よい。吠えさせておけ」
「ほ、吠えさせておけ、だと!?」
「エッジ、やめて」
リディアは振り向いて、エッジの袖を掴んだ。その表情が穏やかなことを確認して、ちょっとエッジは安心したようだ。
心配そうに見るローザとセシルをそれぞれ見てリディアは仲間たちに聞いた。
「私、もっと力が欲しくても、いいのかなあ?」
「リディア、どういうこと?」
「まさか、あの男が幻獣だっつうんじゃねえだろうな」
エッジはちらりとその男を見て言う。セシルははっとなって
「まさか、リディア」
「・・・あなたは、バハムートなのね?」
その名を口に出すことが躊躇われたけれど、リディアはまっすぐに男を見た。彼はそれには答えずに
「娘よ、私の力が必要か」
「あなたがバハムートならば。お願い、力を貸して。私たちの旅は、まだ続くの!」
そのリディアの言葉を聞き遂げるように、目の前で男の輪郭がぼやける。従者二人の姿が瞬時に彼らの目の前から消えた。
彼らは思った以上にその洞窟の高さがあることに気づいた。幻獣たちはいつでも呼ばれた場所に収まる密度でその姿を表すけれど。幻界の部屋はとても天井が高く、しかも幻獣王リヴァイアサンとその妻アスラがいる館は更に大きかった記憶がある。
リディアは不思議に思って幼い頃に聞いたことを思い出した。
どんな場所でも現れて、よほど小さくなければどんな大きさででも実体化出来る。
けれど、その居住区(つまりは幻界だ)くらいは、本来実体化したときに一番楽な大きさで作られているのだ、と。
ここは、あまりにも天井が高い洞窟だ。
それは不自然だと思っていたけれど。
「うっわ!!」
エッジが叫んだ。
彼らの目の前に、巨大な竜が現れる。黒光りしたその巨体は、明らかにこのフロアが彼のサイズに合わせていることを物語っていた。
その姿は神々しささえ感じられるほどで、リディアはまばたきもしないでみつめている。
「お前達の力を、見せてみよ!」
声が人の言葉で響く。それから、人ではない竜が咆哮をあげる。
なんて綺麗なんだろう。
セシル達がすべてを了解して戦闘態勢にはいっても、リディアはそんなことを思ってその竜−幻獣神バハムート−を見ていた。


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モドル

いやはや!すみません。あまり多くは言わないで呆れといてください。(苦笑)一体○年前の自分が何を考えていたのかさっぱりわからないのですが明らかに・・・バハムートに妄想はいってます。(笑)
それと、バハムートの言葉使いがゲームと大幅に違います。んだけど、もうちょっと威厳を出して欲しかったのさ・・・。(汗)
なんで褐色にしたんだろう?何故エルフ耳?当時の自分に問い掛けても返事は返ってきませんが、FF4初プレイあたりで既に出来てしまったこのイメージが○年に渡ってあたくしを支配していることは事実です。
基本的にオリキャラは作らないことをモットーに二次創作をしているのですが、これはほとんどオリキャラです。すみません。そういうのが不愉快な方々はこの話はかっとばしてくださいませ。
そのうちバハムート&リディアのトップ絵にしたいです。(笑)・・・エッジは?