あいのことば-1-

ゴルベーザに操られていたカインはようやく正気を取り戻した。彼ははじめは何が起こっていたのか理解が出来なかったようだったが、ようやく操られていた間の断片的な記憶と、その前後の仲間(と本当は思いたいし、思われたい、セシル達のことだが・・・)からの話や態度から自分の身の上に起きた事柄を飲み込んだ。
そんな彼を待っていたのはエッジからの叱責の言葉だ。
「てめえのせいで巨人が・・・」
痛い言葉をエッジはカインに投げつける。
カインは、黙ってそれを受け止める以外に為す術はない。それを知りながらも、エッジは黙るわけにはいかなかった。彼はこの竜騎士に対する信頼といったものを築きあげる前に、その裏切りを見せ付けられていたのだから当然だ。
「やめて!」
が、それを止めたのはローザだった。
カインが知らなかった事の真相を話してくれたのはローザだ。月に行くことに同意をしてくれたのはエッジだ。そして月へ行こう、と出発の決断をしたのはセシルだった。
彼等はローザとリディアを魔導船から降ろして、月へと向かったけれど・・・。

「・・・」
カインは魔導船から青き星をそっと見つめていた。
この船は不思議な力で航海を行っていて、セシルがクリスタルに手をかざし、月へ行きたい、と願えば自動制御で動き出す。もちろん月から青き星までも同様だ。それ以外の時は自分達で外の様子を見ながら操縦が必要になるけれど、まるで彼等に休めといわんばかりに、星間の運航は、丁度「ちょっと疲れたな」程度のときに彼等が回復シェルターに入っている時間に按配良くなっている。正確な時間でいえば、一刻くらいだろう。
フースーヤが言うには、実際の宇宙の旅、とそれは異なっているから、目で見えるその光景は本来のものと違うのだという。
魔導船は空間を歪めながら星間を行き来する。
本当にその所要時間内での旅であれば、外の星々を眺めても目に見えないほどの速さで流れてしまうほどの速度が必要だし、逆に通常の飛行と同じ速度での旅であればあまりにも遠い距離ゆえに一日二日、という「日」では換算が難しいことになる。
カインはそんなことは知らなかったから、ただ単純に「月と自分達の星は、こんなにも近いのか」と思うだけだ。
エッジとセシルは巨人の中での戦闘の疲れが残っているから、と早々にシェルターに入ってしまった。
カインはまだこの魔導船とやらにあまり慣れていないし、そう疲れているわけでもなかったから、仕方なしに宇宙の様子をそっと見つめる。
思い出すのは。
最後まで、自分に一言も話し掛けてくれなかったリディアのことだ。
失望させてしまった。
きっと、彼女はとても深く傷ついているのに違いない。
もしもあの日、自分に彼女が打ち明けてくれたことが本当ならば・・・。
くしゃ、と髪をかきあげて瞳を閉じる。
彼女の泣き笑いの表情が、彼の脳裏に浮かびあがる。ああ、そんなところは脳の操作はされなかったのだな、と呑気に思っている場合ではない。
「知ってるの。カインは、だって、ローザのこと好きなんでしょ・・・しょうがないよね!だって、わたしも・・・わたしも、カインのこと、好きなの、どうしようもないんだもの・・・」
ドワーフの城でそう言って、リディアは笑いながら涙をこぼした。
自分はそのときに本当は手を差し伸べてやろうと思ったのに。
ずきん、と頭の奥で何か鈍い痛みが走り、リディアに答える余裕がなくなった。痛みを堪えながら何かを言おうとした彼に向かってリディアは
「・・・おやすみっ!今言ったこと、忘れてねっ、気にしなくて、いいから!」
そう言って、カインの部屋から出ていった。追いかけようとして、カインはあまりの頭部の痛みに耐え兼ねて床に倒れた。
次に目が覚めたときは、多分既にゴルベーザからの支配を受けていたように思える。
ローザのことが好きなんでしょ・・・。
その言葉がもしかして何かの引き金になったのでは、と今ならば冷静にカインもわかる。
が、当然そんなことはリディアに言いたくなかったし、知られたくない。
ただ、自分が今しなければいけないことは・・・。
「リディアのことは、後だ・・・俺が、自分で・・・自分のこの女々しさを断ち切らなければ」
恥かしい。
カインは顔を歪めて、魔導船の丸窓に額を押し付けた。
確かにリディアが言ったように自分はローザが好きだったし、セシルを妬ましいと思っていた。
何故セシルなんだ、と子供の自分は何度も何度も思ったものだ。
ローザは親がいないセシルに同情をしているだけなんだ、と初めは思っていた。そしてそんなことを考える自分の醜い心持ちをカインは冷静に分析して、そしてあまりの自分の情けなさに愕然としたものだ。
自分は親友に対してそんな気持ちになる男だったのか・・・。
それは彼に大きい衝撃を与えた。
彼はセシルのことも好いていたし、ローザにはもちろん恋心を抱いていた。それは、昨日今日に始まったことでもないし、バロンから離れるずっと前、それこそ何年も続いた思いだった。どちらに対する気持ちも。そう、恋心の自覚は「少年」の頃だった。
気の優しい自分の親友をローザが好きになっても、確かにおかしくはなかったし、彼等は何よりとてもよく似合っていると思える。
けれど、少年の彼が抱いた「何故セシルなんだ。何故自分ではないんだ」という思いはどこかでくすぶっていて、悲しいことに今ですらその感情を思い出すことが出来てしまう。そして、それに対して受けた衝撃も。
いつまでもそれから目をそらしていたから、こんなことになってしまったのだろう。
言えばよかったのだ。
俺もローザのことが好きだったんだ、とか。
お前がうらやましい、とか。
それを口に出すことは恥かしいことでも情けないことでもない。
出来るならば黙っていたかったけれど、あまりに不器用な自分は、自分の中でうまくその感情と付き合えなかった。それは、まだ自分が子供だからなのかもしれない。カインは深い溜め息をついた。
精算しなかった、目を背けたかった自分の醜い部分が今回のことを引き起こすきっかけになったのだろう。
そう思うことはあまりに辛かった。
それに。
今、自分の心の一部を確実に占めている、愛らしい緑の髪の少女への思いすら、本当は勘違いではないのかと思えてしまう。
自分ですら信じられないこの気持ちを、どうやって彼女に伝えられるというのだろうか。
(ローザのことを好きだから、こんなことになったのだろう、と言われても俺は否定を出来ない)
ローザのことを諦めきれていないのだろうか。
いいや、そうではない・・・。ただ。
ローザに選ばれなかった自分が。
カインは忌まわしげに窓をごん、と拳で叩く。
「リディア・・・俺は」
自分で「後だ」と呟いたはずの、その少女のことが心から離れない。だって。
わたしも、カインのこと、好きなの、どうしようもないんだもの・・・
そんな告白を彼女からさせてしまった自分の不甲斐なさに、カインは深い溜め息をもう一度吐くのだった。

彼女の吸引力は、カインを怯えさせた。
幼かった頃のリディアを見たのはほんの僅かな時間だったから、カインにとっての「ミストの少女」は、完全に「今出遭ったばかりの少女」としてそこに存在していた。
目があった瞬間、驚いた。
こんなに綺麗な瞳を、自分は見たことがない。
いつだって恋の始まりというものは突然で、人々を驚かせる。
カインは一目惚れは信じていない人間だったし、実際長い年月彼が思いを寄せていたローザに対する気持ちだって、じわじわと気付けばそうなっていた、という緩やかに生まれた愛情だったし。
どんなに可愛い女の子達が彼に声をかけても、彼の気持ちは揺らがなかったし、どんなに綺麗な女性が戯れ半分で彼にアプローチをしても、大人の女性への憧れだけで彼がその気持ちを乱すことなぞはなかった。
だからこそ、ドワーフの城で過ごした数日の間に、カインはどうにも抗えないほどの自分の心の変化に戸惑っていた。
再会の夜、カインはリディアとゆっくり話をすることがようやく出来た。
不器用な彼は、彼女と何を話して良いのかはわからなかったけれど、彼女の母親のことだけは謝らなければいけない、と思っていた。
「すまなかった」
他に、うまい言葉がみつからない・・・カインは己の社交性のなさと語彙の少なさに失望しつつ、そう告げる。
ドワーフの城で一人でふらふらしていたリディアを見つけて、酒場に誘ったことすら、自分にしては上出来なくらいだったけれど、その後がいけない。
正面に座ったリディアは果実を冷たい茶で割った甘い飲み物を飲みながら小さく笑う。
「ううん・・・仕方なかったんでしょ・・・もう、いいの。今はそのことにこだわっている時じゃないもんね」
「・・・確かにそうかもしれん・・・だが・・・」
「あのときのことがきっかけで、わたし、召喚士の才能に目覚めたみたいだったの。だからねえ・・・」
リディアはちょっと照れくさそうに
「あの日、死んじゃったお母さんが、死んでも、ここに、きっといるのかなーって。一緒にいるんだ、今」
そういって彼女は自分の胸元に手をあてた。カインは怪訝そうな表情で聞く。
「・・・一緒に?」
「うん。だって、あのとき、わたしタイタンを呼び出しちゃったんでしょ?覚えていないんだけど」
ちゅー、とストローを使って茶を飲んで、リディアはもう一度カインに笑いかけた。
「それまで、チョコボしか呼び出せなかったのに、いっくらなんでもタイタンが急に呼び出せるわけないもん・・・。だから、お母さんがわたしを守ってくれるために・・・ううん、わたしが、自分を守るための力をきちんと使えるように、教えてくれたんだと思って。んーと、わたしが言いたいこと、伝わるかなあ?わたし、変かなあ?」
「・・・」
リディアが言っていることは、カインにはよくわからなかった。
ただ、彼は
「そうか・・・リディアが、そう言うなら、そうなんだろうな。そう思う」
そう答えることで精一杯だった。
なのに、そんな彼にリディアは満面の笑みを浮かべて
「よかった!」
と嬉しそうな表情を見せるのだった。
それが、彼女からの許しの言葉だとは到底思えなかったけれど、それでも彼女が笑顔を向けてくれただけで素直に「嬉しい」とカインは思うのだった。

再会の翌日にはバブイルの塔に赴いて共に戦い、彼女の召喚の力を見せ付けられた。そしてエッジとの出会い。
めまぐるしい環境の変化ではあったけれど、それよりなにより、どんどん彼女に吸い寄せられていく自分の気持ちの変化の方が彼には脅威だった。
ヤンが、シドが、次々に犠牲になっていく姿を見て、リディアは泣いていた。
それを慰めることが出来るのは、自分ではなくてセシルだということにまたカインは気付き、もどかしさに苛立った。
まあ、シドはその後ドワーフ城で手当てを受けていたことがわかって安心はしたけれど・・・。
自分はあまりにも不器用で何事も人の感情の動きに対してはいたらなくてどうにも出来ない。
ただわかることは。
リディアが悲しむ姿は見たくないと思ったし、自分がどうにか出来ればとも思える。
もちろん仲間だから、彼女が女の子だから・・・。
それが理由だと彼は自分に言い聞かせた。
「カイン、どうしたの、何難しい顔してるの?」
「・・・リディア・・・」
夜、寝付かれずに城の外に出たカインは、ぼうっと夜風に当たっていた。
地底でも風は吹く。そう思うとなんだか少しそれはおもしろかった。
ドワーフ等が言う「夜」は、体が覚えている「眠る周期」であり、「夜」とか「昼」とかの区分けは太陽によってもたらされたものではない。だから、夜出歩いても何ら危険は昼と代わりがあるわけでもないし、あたりの風景すらどうという変化はない。
だからリディアが女一人でふらふらしていても、城の兵士達は怒るわけでもないし、外出を無理に止めるようなこともしない。
そっとカインの後ろから現れた彼女は、ひょこっとカインの顔を覗き込んでそう言った。
「寝ないのー?」
「リディアこそ」
「うん、わたしはもう寝るよ。でも、カインが出ていくの、見えたから追っかけてきちゃったの」
「そうか・・・どうして追いかけてきたんだ?」
「え?・・・んー、あのねー・・・んーと・・・」
そう聞き返されてリディアはしどろもどろになる。それから、ふふっ、と笑って
「なんでだろうね?なんか、声かけたくって」
「なにも用事がないのに?」
「うん。用事なかったら、声かけちゃ駄目・・・?」
「・・・」
そう問い返されて、カインはかあっと赤くなった。
なんだ。
まるで子供のようなことをリディアに自分は言ってしまっている。その自覚。
自分の言葉は、まるで、もっと自分を喜ばせるような回答をリディアがしてくれるのではないか、という期待から来るものだった。
情けない。そんな都合がいいことを何故俺は期待しているんだ?
「なんだかカインはいつも難しい顔をしているね」
「難しい顔・・・愛想は確かにないと思うが・・・」
「それに、あんまりお話しないし。何を考えているのかなってわたし、いっつも聞きたくなるの。ねえ、今は?ねえ、さっきは?って」
うふふ、と笑ってリディアは肩をすくめて見せた。
カインはそれへ
「別に話すことなんて、特にない」
と冷たい言葉を返した。
それを聞いてリディアはちょっとだけむっとした表情を見せる。
「だってカインのこと知りたいし、お話して欲しいんだもん」
「俺のこと・・・?」
そうやって自分のことを知りたい、と人からはっきり求められたことがそれまであったか、とカインは記憶を探る。
何度か、彼に興味を示した女性から似たことを言われたことはあったかもしれない。
多分彼女たちはカインの顔の造作や、竜騎士団内のエリートとされている彼の肩書きに興味を示したのではないか、と冷静に判断して、すげなくお断りをしたはずだった。もちろん、リディアは彼のそんな肩書きはよく知らないし、話しても理解をしてくれないに決まっている。
だから、彼女は違う、とカインは思った。
そう思えば、逆に一層、何故彼女がそんなことを言うのかわからない。
と、リディアは彼に言葉を続ける。
「そうだよ・・・わたし、カインのこと知らないから、知りたいなあって。それにね」
「うん?」
そして、次の瞬間、彼女は無邪気な笑顔にころりと変わって、カインにとんでもない告白をしたのだ。
「わたし、カインの声、好き。なんか、聞いてて気持ちいいんだあー・・・」
「・・・」
まいった。
カインは驚いてリディアの顔をしげしげと眺めた。彼女は「なに?」という風に不思議そうにそれに視線を返す。
「わたし、変なこと言った?カイン、何か怒ってる?」
「いや・・・その」
「?」
「あまり・・・そういうことを、言わないほうが、いいかと思って」
「そういうことって・・・?なんで?」
「・・・」
カインは困惑の表情を浮かべてリディアを見る。
ここ数日でわかったことといえば。
彼女はあまりにも純粋で、子供らしさをもったままで成長した少女のようだ、ということくらいだ。
それでも手放しに「声、好き」などと言われてしまっては、ついつい自分だって悪い気はしないし、それにどことなく性的な響きをイメージしてしまうのも仕方がないことだ。
素直に「そうか、ありがとう」と言うよりも先に、恥ずかしさが先立ってしまったし、その無防備な「好き」に(例え「声」に対する評価だとしても)カインは頬を紅潮させた。
ますます、良くない。
突然やってきた恋の予感から目を背けていたのに。
カインは自嘲気味の笑みを浮かべた。

ローザが少し疲れているから、と封印の洞窟にいく前にもう一日休むことにした。
朝食の席でそう決定してセシルはみなから了解を得る。
正直なところ、仲間になったばかりのエッジも、よくよく一人で戦って無茶をしていたから、張り詰めていた神経が緩んだのだろう。彼もまた口には出さなかったけれどその休憩一日がありがたい様子ではあった。
セシルはローザにゆっくり休むように言い、それからジオット王に呼ばれているから、と一人で去って行く。
「んじゃまあ、俺ももー一眠りしようかな」
エッジはうーん、と伸びをして、お先、と声をかけてドワーフ城の食堂から出て行ってしまう。
「これ、もう終わったかー?」
「あ、うん。ごちそうさま!」
「これ、食べないのか」
「ごめんなさいね・・・食欲がなくて」
ローザはドワーフの女の子に謝る。見るとローザは朝食のプレートのほとんどに手をつけていない。リディアとカインはその様子を心配そうに見つめるが、ローザは笑って「朝は弱いのよね・・・」と答えるだけだ。
エプロン姿のドワーフの女の子が、食事を終えた食器をかちゃかちゃと運んでいく。彼らはいつも働き者だと思う。その姿を見るのが好きだ、と言ってリディアはぱたぱたと動き回るドワーフの女の子達を目で追ってにこにことしていた。
リディアとローザ、それからカインは食後に茶を少し飲んでから、3人で食堂を出た。
「ねえ、ローザ、顔色悪くない・・・?」
最初に気付いてそう言ったのはリディアだ。
「え?そうかし・・・」
ら、と言おうとして、ぐらり、とローザの体が揺れる。
「ローザ!?」
彼女は膝をがくん、とついて、それから前のめりに倒れた。カインが慌ててそれを支えた。彼の腕の中でローザは完全に力が抜けている様子で、それなりの体重がカインの腕には感じられる。
「・・・どうした、ローザ・・・貧血か」
「ローザ、ローザ、大丈夫っ・・・?」
「リディア、揺らすな・・・貧血だろうから、とりあえず部屋に運ぶぞ」
「う、うん・・・」
カインはそう言ってローザの体を抱きかかえた。
なんとなく彼女の体からは良い匂いがするような気がする。
リディアは先に部屋に戻って、ローザのベッドを整えた。
ほどなくしてカインがローザを運び込んで、ベッドに横たえる。
「セシル、呼んでくる・・・?」
「いい、大丈夫、多分休ませればいいはずだ」
「えーと、えーと・・・」
「安心しろ、たいした事は無いから」
カインはおろおろしているリディアをなだめながらローザのブーツを脱がせた。それくらいは自分が、とリディアは言おうとしたけれど、なんだか声が出なかった。ただ、カインが脱がせたそのブーツを受け取ってそろえるくらいのことしか出来ない。
「苦しくはない恰好だな・・・」
毛布をかけてやって、それからカインはそうっとローザの顔にかかる髪を指先で優しく後ろに流してやる。
ああ、そうだ。ローザの髪に触れたのなんてどれくらいぶりだろうか?もっと自分達が少年少女だった頃に彼女の髪にふれた思い出をカインは少し思い出した。
大人になったけれど、こんなときでも相変わらず美しく整っているその顔を見て、純粋に「綺麗だな」とカインは思う。
そして一瞬だけ、彼女の髪に触れたまま彼の動きは止まってしまった。
その瞬間にリディアの目が彼の姿に奪われていたことを、彼はきっと気付かなかったのだろう。

「カインは・・・ローザのこと、好きなんだね」
部屋から出て通路でそんなことをリディアに言われ、カインは驚きの表情を浮かべる。
一体突然何を見てそんなことを言うのだろう、と怪訝そうだ。
「リディア?」
「あ、あの、そのね・・・ただ、そう思っただけ」
カインが僅かに怒りを含んだ視線を向けたことに気付いたか、リディアは慌ててそう言った。それにカインは曖昧な返事を返してしまう。
「・・・ああ、好きだぞ。仲間としてな」
「・・・そうなの?」
「そうじゃない方がいいのか?」
「そういう意味じゃないけど・・・」
リディアはちょっとだけ不満そうにそう言うとうつむいた。
なんだ、一体何が言いたいんだ・・・少しばかりカインは苛立って、厳しい視線をリディアに送ってしまう。
「ごめんなさい、カインのこと・・・立ち入ったこと聞いちゃって・・・ローザ見てるときのカインの目って、優しそうだから・・・」
「俺の目?」
「うん」
「・・・気のせいだろう。そんなこと、今まで言われたことなんてない」
「気のせいじゃないもん」
頑なにリディアはそう言った。けれど、彼女の語尾はわずかに震えている。それに気付いてカインは何かを言いたかった。けれど、彼は何を言っていいのかわからない。一瞬名前を呼ぼうとして、彼の喉元にそれはひっかかって音にならないままだ。
彼のそんな様子を見ることもなく、彼女は突然カインの前から、どこへかはわからないけれど走っていってしまった。
「リディア・・・」
追いかけていくべきなのかすら、彼にはわからない。
ようやく彼女の名を口に出来たのは、彼女の姿が視界から消えてからだ。
後に残されるのは、リディアが何を言おうとしていたのかわからずに、ただとまどうだけの不器用な男だけだった。


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モドル

ははは・・・(汗)続き物になってしまいました!ギニャー!!!
いやもう・・・どうにもこうにも・・・色んな話の後書きで書いているんですがあたくし、突然最初から「この2人はカップルよ」と準備されてる小説書けないものですから・・・。
ごめん!ゆーたん!(土下座)所詮あたくしはエッジ×リディア、ポロム→カイン派でした(号泣)
これじゃあ「ラブラブなカイン×リディアの話」ではなくて、「ラブラブなカイン×リディアになるまでの過程」だよ!今思えばリディア企画のカイリディも、そのせいでページ増量になったハズ・・・。あのとき「もうカイリディはかかない」と言ってましたが・・・。
相変わらずうちのカインさんは恋愛体質な男でごめんなさい。恥ずかしい男なんです。うちの彼は・・・。
情けなくて、小心者で、そのくせ嫉妬深くて、不器用。
女性からアプローチをうけても、自分からは出来ない。
そういう人間なので、結局あたくしとしては15年後のポロム→カインに思いを馳せるのでした・・・。(笑)