預言−1−

満ちる直前の月が、夜に動く生き物の姿を煌々と照らし出していた日。
まだ子供だった俺は夜中に目覚めて、毛布の中でもぞもぞと動き回り、困っていた。
昨日は一日野良仕事を手伝ったから、いつもならばくたくたで目覚めることもなかったはずだが、一度目覚めてしまったらなんとなく眠れない。
隣のベッドを見ると、母ちゃんはいなかった。
何をしているんだろう、こんな真夜中に。
ふと体を起こすと、たてつけの悪いドアの下から明るい光が漏れているのに気付く。耳を澄ませば、ぼそぼそと人の声が聞こえてきた。
いつも食事などの生活をしている部屋と、ベッドだけがぎゅうぎゅうに置かれた寝室。それが、俺達2人が暮らしている家。
父ちゃんの記憶が俺にはなかった。今から8年前。俺が5歳の頃だよな。父ちゃんは既に他界していた。
母ちゃんは毎日畑仕事をしていて、俺はそれを手伝う。時間が空いた時には、村の門番のドッセルさんに剣を教えてもらう。俺は、大きくなったら村の門番をドッセルさんと交代するんだそうだ。たまに紛れ込んでくる動物を村に入れないように四六時中見張っているなんて、やたら暇な仕事だなぁ、と俺はぼんやりと思っていた。
畑仕事の合間にも、かあちゃんは村のみんなとおしゃべりしたり、お茶を、なんていうんだろう。振舞ったり?お互いの家を行き来することが多い。だから、こんな遅い時間に、誰かがわざわざうちにやってきて話をしているってことが、俺にはひどく一大事に思えた。
ベッドから降りて、そうっとそうっと音をたてないように。
うちはおんぼろだからあちこちギーギー音が鳴る。でも、「この床板とこの床板の上は大丈夫」と自分でみつけだしたルートがある。いたずらをするときに必ず通るべき、信頼を寄せている床板たちだ。
そっとドアに近付いて、更に耳を澄ます。
長老の声だ。
長老と、それから、ドッセルさんの声と、かあちゃんの声。
ドアの僅かな隙間から俺はそうっと、室内を覗き見た。いつも、俺とかあちゃんが食事をするテーブルを囲んで、長老とドッセルさんは浮かない顔をして話をしているようだった。母ちゃんは影になっていて見えないし、見えても俺の位置からじゃあ顔を見ることは出来ないだろう。

「あの子を村の外に・・・そんな・・・」
「気持ちはわかるが、仕方がないんだよ」
「受け入れてもらえぬかのう」
2人は、何かを説得しているようで、しきりに母ちゃんに語りかける。
それに対して母ちゃんは、どうしていいのか困っているように俺は感じた。
「村の預言通り、翼ある者がこの地に辿り着いたじゃあないか」
ドッセルさんは深いため息をついて、重く言葉を続ける。
「だからといって、その後の預言が当たるとは完全に信じているわけじゃあないけれどね」
「しかしの、村に残る預言は今までいくつも当たってきていたし、それで我々は救われたことも多かったからの、無下には出来ないものじゃてな」
「翼ある者が残す、生きる地を持たぬ者」
母ちゃんは、なんだかよくわからない言葉をすらすらと言い始めた。
「この地を殻としてその力熟す時、大いなる加護を受けた剣を持ちて、世界を救いし勇者となる」
「それが、あの腹の中の子供だっていう証拠はないんだけどな」
ドッセルさんはそう言って、母ちゃんがいれたらしいお茶をずずずっと音をたててすすった。
「この村に伝わるいくつかの預言はそれが最後。それなら、我々はそれを信じようと思うんだ。なんだっけ、ほら、7年前の土砂崩れだってさ、預言にあったじゃないか」
「あれは、久しぶりの預言だったのう・・・わしがこの村に生れ落ちてからは、3つの預言がぴたりと当たったものじゃ」
「もとは、いくつ預言があったんだい」
「10も20も。わしの家の本棚に、走り書きされたものが残っておるが、最初の何枚かはもう文字が読めんほどでな。物心がついたときに、まず1つ目があたり、その次は16年ほど前かの・・・招かれざる獣現れては、幾度となく災いを呼び寄せる。実際、その時は苦労したものでな」
長老のその話を途中で遮って、母ちゃんは声を荒げた。
「だからって、あの子を村の外に出すなんて、わたしは反対ですよ!ドッセルさんがいるじゃあないですか!」
「おかみさん、落ち着いておくれよ。あんただってわかっているはずだよ」
ドッセルさんは大袈裟に顔を横に振ってみせる。
「俺は、勇者なんてもんに剣を教える才能はなければ、実際はそうそう本当に魔物なんてもんを切ったことだってない。あんたんとこの坊主は才能がある。ほんの1年、ほんの2年でいいんだ。村の外に出て、本当の剣を使えるようになってきてくれれば。そして、それをあの子に教えてあげればいいんだよ」

およそひとつき前、この村には新しい夫婦が外からやってきた。外というのは、この村以外のありとあらゆる世界のことを俺たちは呼んでいる。村の外から人が来ることなんて、俺が生まれてから二度目のことだ。
一度目は、山道に迷った人間がものすごい偶然で辿り着いただけだった。そういう人間は稀にいるらしく、わずかな食糧とわずかな寝床を与えた後、なんかよくわからないけど、長老の家で焚いたヘンテコな匂いがする煙を吸わせて、ふもとまで誰かが送っていくのだという。
けれど、一月前にやってきたその夫婦を見た時、誰も彼も驚いて・・・俺はただ、その奥さんとやらの背中に鳥みたいな羽が生えていることにそのまんまびっくりしただけだったんだけど。長老や他のおっちゃん達は「預言」がどうのこうの、って言って殊更意に驚いていた。
奥さんはとても綺麗な人で、真っ白な翼を背に持っていた。俺は村の外にも出たばかりだったから、いくらなんだってこの村にいるおばさん達とだけ比べているわけじゃない。ブランカやエンドールの辺りにいる「今風」の女性とは少し違う、なんていうんだろう。生活の匂いがあまりないけれど浮ついていない、そして意志の強い瞳を持った美しい人だった。子供心に、女の人というものは不思議な美しさがあるものだと感心したものだ。
最初は、外からきた人間はやっぱり村には置いておけないから追い出そうってことになった。でも、その「預言」とやらをみんなは口に出し始め、村全体の会議みたいなのが長々と開かれた。そして、その会議の後から、想像したよりもあっけなく、2人はこの村の住民になった。
やってきた頃は、その奥さんのお腹は少し大きくて赤ん坊を身篭っているようだった。俺は呑気に、体が重いからさすがに追い出さなかったんだろうなーなんて程度に考えていたんだ。
でも、本当は違う。やっぱりその「預言」ってやつのせいだったのだと、3人の会話を聞いて俺は直感した。

翌日、届け物だっていう嘘をついて長老の家に行った。今日、長老は村の大人達何人かを集めて、山に生えている薬草やらなにやらの説明を−それは季節ごとにやっていたみたいで、数年後は俺も教わることになったんだけど−していて留守だと俺は知っていた。
長老の家の本棚は、それ自体もかなり古いもので、本を取ったり置いたりするたびにぎしぎしと自身を震わせて音を鳴らす。もちろん、入れ物に相応しいほどに古ぼけた本だけが何冊も置いてあり、そういう「古いもの」特有の匂いをその場に放っていた。
俺は、文字の読み書きはそう得意ではなかったけれど、不得意ってほどでもない。母ちゃんが小さいときから、野良仕事と文字の読み書きの二つだけは根気強く教えてくれてたから。だから、長老がいない間にお目当てのものが探せるんじゃないかと思ったのだ。
3人の話を聞いてわかっていたことは、その「預言」てのが書いてある本は、やたらと古いんだってこと。最初の何枚かは読めないくらいになってるってことだったし。
それを頭において、1冊1冊手にとっていくと、あっけないほどに簡単に目的の本が見つかった。
それは本というより、誰かの日記みたいなものだった。少しだけ読みにくいクセのある文字が、日光にかざせば消えていきそうなほど変色した紙の上に踊っていた。

雷鳴がとどろいて、大木が折れ、水に流されてくる。

とか

地面が揺れて多くの建物が消え去り、失意に陥れられるだろう。

とか

そんな感じの、なんていうんだろう。自然災害ってやつかな。そういうことがたくさん書いてあった。
それらのことは、「前触れ」「前触れに気付いたら何をするべきか」「実際に起きること」「そして、その後のこと」の四つにわかれてどれもこれも書かれている気がする。
たとえば、これだ。長老が言っていたヤツ。「からからに池が渇いてしまいそうな暑い日が5日以上続いたら、困った獰猛な動物が現れる。そして、何度も何度も悪いことが起きる。村の門を閉じて柵を作って、2日しのげば村は救われる。もし、それが出来なければ、死者が出る」ってやつ。
それを読んだ時はわからなかったけれど、大人になったら理解が出来た。これは、水が干上がるほどの暑さになった、異常気象時の話だ。雨水をためこんだりしていたから、村の水を嗅ぎ付けて、気が立った動物が村を襲ったりしたんじゃないかな。後から聞いた話では、この預言通りのことが発生した時、門番が一人死んだんだって。動物にやられたらしい。
俺は、いつの間にかその本に夢中になっていた。どのページに書いてある「預言」も、過去に起きた出来事なのだろうし、何が起きたのかを容易に想像させるものだったからだ。自分の高鳴る鼓動に気付かないまま、次々にページをめくっていった。
それに、大人達がもっている秘密は、この村全体の秘密なんだってことに、子供心に気付いていたからだと思う。そのことが、子供である俺にとって、その本の価値を上げてくれていたのだろう。
そして、最後に近いページに、それは書いてあった。

翼ある者が残す、生きる地を持たぬ者

この地を殻としてその力熟す時、大いなる加護を受けた剣を持ちて、世界を救いし勇者となる

守りたまえ、守りたまえ、守りたまえ

その者に、すべての力を与えたまえ

愛をもってして

おかしいな、と俺は思った。
この預言を最後に、あとは白紙のページが何枚か続いている。
最後のこれだけが、他の者と違って、「前触れ」「気付いたら・・・」といった流れと違う気がする。
最初からもう一度ぺらぺらとめくると、その本の表紙裏に走り書きがあるのを俺は見つけた。

わたしを受け入れてくれた村人達のために、わたしが出来る唯一のこと。
息絶えるまでに夢に見たことを書き綴る。ただ、ひたすらに。

最後の預言を書いた後で、これを書いた人間は死んでしまったのだろうか。
どちらにせよ、古ぼけたこの本がぴかぴかの新品だった頃を考えれば、その当時を知っている人間なんて、今生きているはずがない。だから、俺のその疑問は何の意味もなかった。
俺は、食い入るようにその本を見つめていた。何か、魅入られたように。
その時
「預言書を、見たのか」
突然声をかけられて、俺は喉から心臓が出そうなくらい、いや、心臓以外なんだっていいんだけど、それくらい驚いて、情けない声をあげて振り返った。
「じ、じーさん!」
そこには長老が立っていた。長老は怒ったふうでもなく、いつもと変わらず飄々と、俺の側に近寄ってきた。
「昨日、聞いていたのか」
「お、俺・・・」
「言えば、こそこそせずとも、読ませてやったというのにのう。大人がこそこそやっとるから、お前までこそこそしてしまったんじゃなぁ」
そう言って長老は、へっへ、と笑った。
「話を聞いていたなら、早いの」
「・・・なんだよ」
「この村を出て、剣の腕を磨く旅に出ろといったら、お前はどうする?」

10日後、俺は村を出た。
ひとまず一年後一度戻ってくる約束を母ちゃんとして。
俺たちの村はもともと排他的で、村の人たちも狩りに出る以外はあまり村を離れなかったし、山を降りるなんてとんでもないと誰もが口をそろえていた。けれど、俺がその禁を破ることは、誰一人として文句を言わなかった。それほどまでに、あの預言ってやつはみんなに信じられていたのだと思う。
あの預言が何故当たるのか、とか、預言をした人間は一体どういうヤツなんだ、とか、そんなことは俺にはわからなかったし、長老もわからないのだと言っていた。
普通だったら「そんな戯言」と鼻で笑われるのが関の山だけれど、長老以外の大人達も、あの預言は恐ろしいほどに当たるのだと言っていた。
長老が言うには、あんなものに縛られて生きるのはおかしい。村に対する預言なら、いっそのこと一度村をなくしてはどうだろう・・・そう言って30年くらい前にあの村にいた人々は散り散りになっていったんだという。
けれど、人間はとても弱いもので、誰一人他の町や村で生きることはできず−それは、順応できないとかそういったことではなくて、やはり故郷ってものは愛しいものなんだと長老は教えてくれた−人々は戻ってきて村は存続した。
そして、何もなかったかのように、あの預言書に書いてある預言が当たり、書いてあるとおりに対処をすれば難を逃れることが出来る。
長老にもお父さんがいて(当たり前だが)その人から聞いた話によると、あの預言書を書いた人は、北西の土地に向かって旅立ったのだという。だから、途中で死んじゃってあの預言書が途中で終わっているわけではないらしい。ただ、村を出る時がきたから、それまでに書き綴ったものを置いていったんじゃないかと長老は言う。
村を一度解散した、昔の村人の気持ちが俺にもわかる。
あんな、どこの誰とも知らない人間が残した預言に縛られ、次はこの事件が起きるかも、とか、この時に失敗すれば人が死ぬかも、なんて考えて生きているのは馬鹿馬鹿しい。
それでも、俺はその預言を口実にして村の外に出ることが出来たし、それはかなり俺にとってありがたいことだ。
遊んで暮らすほどの金なんてもらっていないから、俺はそれからひたすらに剣の修行をするために町を回り、強そうな剣士がいればその身の回りを世話するから、といっては弟子入りをしていった。
俺の経験ではあるけれど、本当に強い人間っていうのは、弱い人間をあごで使ったりはしない。
純粋に己の剣技を評価する相手を、どうしてそんな風に扱おうか。
エンドールという、やたら大きくて、腰を抜かすほど人がたくさんいる場所に行くと、そこには闘技場で戦士達が技を競い合っていた。聞けば、数年に一度それは催されているとのことだった。
村を出た時にもらってきた最後の金を使って、俺はそれを見に行った。必ず、自分の腕を磨くために役に立つことが起こると思っていたからだ。そして、それはその通りになった。
その時に準優勝をした剣士に気にいってもらえて、俺はそれから半年ほど、その人と旅をすることになった。

一年後村に戻ると、向かいの夫婦には赤ちゃんが産まれていた。女の子だ。その子には翼はなかった。
俺は一緒に旅をした先生と、半年後にもう一度旅に出る約束をしていた。
そのときには、先生の更に先生に会わせてくれる。だから、ブランカで落ち合おう。そう交わされた約束。
長老や母ちゃんにもそのことを伝え、まだ、自分の剣の腕には自信がないことを告げた。
「マリアに剣を教えられるのは、どうせあと数年先のことだしの。お前は、唯一今のこの村で外の世界を見てきた人間じゃ。お前はお前が望むように剣の腕を追究し、そして、それをあの子に教えてやってくれればそれでよい。我々はお前のやり方には口出しをせぬよ」
「うん。わかったよ。じーさんだって、薬草だなんだって色々教えてやるつもりなんだろ」
「阿呆。お前は、わしがただのじじいだと思っとるようだな」
「へ」
「後で、肝を冷やしてやるぞ。へっへ」
その言葉の意味がわかったのは、それから数年後。俺が、その女の子−マリア−に剣を教えるようになった頃だった。
長老はただのじじいではなく、魔法を使うじじいなのだと俺は知ることが出来た。
何故、こんな山奥の寂れた村にいるじいさんが、いくつかの魔法を習得しているのか俺には不思議だったけれど、それを言い出したらこの村には不思議なことがたくさんありすぎる。だから、俺はあえてそのことを長老に問いたださなかった。俺がわかっていたことといえば、この村のみんなはとても優しくて気がいい人たちばかりだということ。それだけで充分だった。
マリアが生まれてからというもの、もともと閉鎖的だったこの村はその色を濃くしていた。
ああ、この村そのものは、確かに「殻」なのだ。
村を出たときよりも少しは大人になってきた俺はそんなことを思いながら日々を過ごし、たった一年でもずいぶんと老いてしまったように見える母ちゃんと野良仕事をしつつ、剣の腕を磨き続けた。
長老が何故この村を出るように俺に勧めたのかは、一年の旅でなんとなく、おぼろげながらにわかる気がしていた。
確かにドッセルさんはこの村では一番の剣の腕前を持っている。
けれど、それはあくまでもここだけのことだ。
ひとたび外の世界に飛び出せば、もっともっと強いやつは山ほどいる。
そして、剣を振るわなければいけない状況にも、たくさん遭遇するのだ。
長老は、本当に「戦う」ことを覚えた人間の剣を、マリアに伝えるべきだと思ったのだろう。そして、ドッセルさんもそれをわかっていたから、自分では駄目なのだと決断したんだと思う。
俺は子供だから、どれだけ自分が非力なのかを突きつけられても、絶望もなく、ただただ強くなるためにもがくことが出来た。けれど、ドッセルさんのように大人で、この村から出たことがない人が同じ立場になったら、俺のようにうまく立ち回れるとは思えない。
俺は、うってつけの人間だったのだ、と、自分で思っていた。
そして、それは結構悪くないとも思っていた。
「お前は、約束を守ったね」
母ちゃんは、時々俺にそう言って、本当に嬉しそうな表情を向ける。
料理を盛り付けた皿を、どん、とテーブルの真中において、それから、スープを皿に注ぎながら話を続けた。
「他の町に行けば、そりゃあそこでしか体験できないこともあるだろうし、楽しいだろうさ。でも、お前はちゃんと、この故郷を見失わないで帰ってきてくれたんだ。嬉しいじゃあないか」
少しだけ、それは俺も不思議だと思った。
何故俺は約束を守って一年で戻ってきたのだろうか。
一年なんてあっという間だ。まだまだ世界は広くて、俺の剣も未熟で、その未知の世界に後ろ髪をひかれる思いも確かにあった。
けれど、俺はあの言葉に魅せられてしまったのだと思う。

守りたまえ、守りたまえ、守りたまえ

その者に、すべての力を与えたまえ

愛をもってして

最後のフレーズは、ひどく俺には不快に思えた。
愛なんていう言葉は、子供の俺には照れ臭くて、見たくもないし口にもしたくもない単語だったし、人様から「愛情を持って接しろ」とか強要されるものじゃあないはずだ。
そんなこと書かなくたって、あの子が普通に育ってくれれば、村のみんなは受け入れて優しくしてくれるだろうし、誰だかわからないもう死んじまった人間に言われるようなことじゃない。
それに、俺はそいつに言われた通りに生きていくわけじゃない。俺は、俺がそうしたいから選んで生きているんだ。
そういう、ちょっと気にいらない部分はあったけれど、俺はこの預言が嫌いではなかった。
何より、自分が何かを守る力を持つこと。
自分が何かを与えるられること。
そういう立場になるのだ、と思うと、子供心に少しだけ誇らしい気持ちになれたからだ。
だから、早くまた半年が過ぎて村の外で再び修行をして。そして、また戻ってきて。
マリアがもっともっと大きくなって、その時が来れば良いと、そんな呑気なことを俺は考えていたのだ。


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