釈迦の掌


「なんだこりゃ!」
執務室の扉を開けたエッジは、そう叫んだ。
が、傍らにいた爺は冷めた表情で
「もう、その反応も飽き飽きいたしましたわい」
と呟く。
「何言ってんだ、爺。なんだ、これ」
「仕事は山積みと申し上げていたと思いますが」
「……はー。ま、た、かよー」
がっくりとエッジは肩を落とした。
わかってはいた。
一日執務を休むということがどれほどのことか。
今までだってエブラーナに戻ってからというもの寝る間は惜しむほどではないにせよ、彼は毎日執務に追われていたし、エブラーナ全土に足を運ぶ必要もあって、一日まるごと外出をしたことだってある。
だから、彼は知らないはずはなかったのだ。
それでも「なんだこれ」と言わずにはいられぬほど、彼の机上には書類やら何やらが散らかっている。
「第一、昨日城にいなかったのも、公務だろ?」
「もちろんもちろん」
「仕事に行ってる間に違う仕事が溜まるってのは、悪循環だと思わねぇか?」
今までに何度この問答をしたことか、とエッジは肩を落とす。そう思えば、冒頭の爺の反応もしかたあるまい。
「一時期より余程仕事は減っていますし、慣れもありましょうし。さ、覚悟を決めてやってくださらぬと、みなが困ってしまいますわい」
そう言って爺は執務室のエッジの椅子を後ろに下げ、さあ、お坐りくださいとばかりに手をそちらへ添えた。
他国風の仕草は嫌味のつもりなのかもしれない。
エッジは、彼にしては珍しい溜息をついた。


昨日城にいなかったのは、川から新しく水を引く工事の視察と、山岳地帯の農地の視察だった。それだって、本当はまだ先の予定だったのだ。
十日後ぐらいに一日公務を休んで、幻界に行こうと思っていた。
そう思っていた日に予定をねじ込まれたので、更にエッジは自分で無理強いをして昨日にしたのだ。
だから、自分が悪い。わかっている。爺もそれを知っている。
「がーーーっ、くっそ」
執務室に閉じこもって二刻経過した頃、エッジの集中力はぷっつりと切れた。
椅子の背もたれに体重を預けるのは、彼にしては実はめずらしいことだ。
「は、や、く」
会いてぇ。
幻界に戻ったリディアは、エッジのもとへ会いになかなか来てくれない。
いや、来てくれていたことは知っている。来てくれても、彼女は彼に会わないまま帰ってしまうこともあれば、エッジが不在の時だってあるのだ。
それに、公務の合間に彼女のための時間を割いても、あの敏感な子はそれを察知してしまう。
昔ならば、エッジが「だいじょーぶだって」と言えば渋々従ったが、今は彼がそう言って無理をすることがどういうことなのか、彼女も知っているのだ。
(彼女に我慢ばっかりさせる男ってのもなー)
そうエッジが口に出せば、きっと「え、別にエッジの恋人じゃあないよ?」と、残酷な言葉が返ってくるのだろう。
それでもいい。
そんな言葉でもいいから聞きたい。
だから、自分から会いに行く。幻界に行ってしまえば公務からは完全に切り離されるし、リディアも「ここに来られるぐらい、エッジは時間があるんだ」と、少しばかり安心するようにも見えるし。
とはいっても、幻界はエッジにはいささか退屈なので、本当はこちらに……。
「あー、うだうだ言ってないでもうちっと!あぁん?東部の集落で最近流行っている病が……っと、これは爺に投げた方がいいな……症状が曖昧すぎるから、再調査……っと。バロン王国からの飛空艇輸入の契約について……っと……あー、前回ローザの助言でセシルがちっと値を下げてくれたんだよなぁ。次回もどーにかなんねーかな。もう一個欲しいんだよなー……」
個人用に、とは口には出せない。
「たりねーよ……時間と、俺の頭と、それから」
それから。
圧倒的にリディアが足りない。
リディアが隣にいて怒ってくれたり、励ましてくれれば、もう少し頑張れるんだけどなぁ。
なんてことを言えば、きっと責任感の欠如だとか色恋に目がくらんだ愚かしい君主だとかあれこれと爺に言われるのはわかっている。
机に体を突っ伏すと、木の匂いが鼻をくすぐる。
前の戦火で生き残っていた家具職人が、新しいエブラーナ城建設の際に腕をふるって作った執務机だ。
雨の日は、少し湿って雨の香りを放つのではないかと思うほど空気に敏感なその机は、エッジのお気に入りだ。
心を落ち着けたい時は、こうやって木独特の香りを楽しんでいたが、それもここ最近香りが薄れてきたと思う。
良い意味で使い込まれて、木だったものが完全に家具になって行くのだろう。
(そんなに、俺、執務してんだなぁ……)
そう思えば疲れるのも当たり前だ。
それから、リディアに会いたいと思うのも。
本当は、別れの時までに、何かひとつでも約束をしたかった。何かの折に必ず会えるような、そんな約束。
けれども、彼とリディアが共に過ごしていた時間は短く、そんな約束を思いつけるほど共通のこともなかったし、「エブラーナに春になったら奇麗な花が咲くから」だとか、「冬に祭りがあるから」だとか、そんな程度の話では、あまりに遠すぎる。
(そーだよ。会いたくなったら会いに行くからなー、じゃ、俺は行きたくとも行けねぇもんな)
何か約束が出来ればよかった。
そういう柄じゃないと多少思わなかったわけでもなかったが、今となっては悔やまれて仕方がない。
先日会いに行った時だって、彼はうまく次の約束をとりつけることが出来なかった。
第一、一緒にいた間は、約束などしなくても毎日共に寝泊まりしていたのだ。今更、どうにか繋ぎとめるために、会う約束をしようと思ったって出来るはずもないのだ。
「くっそ、もうしらねー!会いにいっちまうぞ!」
エッジは叫んで、勢いよく立ちあがった。
と、その時、まるで彼のその叫びを聞いたかのようなタイミングで、ノックの音が室内に響く。
「あいよ!」
「若様、失礼いたします。御来客がありまして」
扉越しに女中が声をかける。
「今忙しい」
「リディア様がいらっしゃっています」
「通せ!」
今忙しい、の舌の根も乾かぬうちの即答。
女中が扉の前から去っていく軽い足音を確認してから、エッジは大慌てで机上の書類を片付けた。
書類が積んであると、リディアを不安がらせる。
それから、執務室の端に用意してある来客用のソファとローテーブルが片付いていることをちらりと見て、もう一度どっかりと椅子に座った。
(なんだなんだなんだ、どうした。俺の思いが通じたのか。今までどんなに祈っても、こんなタイミングでなんて来てくれなかったくせに、やっべ、俺、顔にやけてる)
ぐるぐる頭の中を回るのは、彼女のことばかり。
つくづく自分は単純でどうしようもない、とエッジはどこかしらでは冷静に思う。
が、そんな風に単純になってしまう恋は、多分これが初めてだ。
(いい歳して、俺は思春期のガキか!)
と、自分に突っ込む余裕ぐらいはあるのだが、彼の余裕など、どうあがいてもその程度が関の山だ。
「エッジ、入るねー」
「おーよ」
聞き慣れているのに、懐かしいと感じるその声。
不安げな様子で扉をゆっくり開けて、リディアは顔を覗かせた。
「よ、久しぶり」
「エッジ、忙しい?」
「だいじょーぶだって。こっちこいよ」
「うん。じゃ、失礼しまーす」
そう言って部屋に入ってくるリディア。
手にバスケットを抱えて、未だに慣れない執務室への第一歩は緊張しているようだ。
エッジはリディアに近づいて、応接用のソファを指差して誘導する。
向かい合ってソファに座ると、リディアはローテーブルにバスケットを乗せ、蓋を開けた。
「なんだなんだ、えらく今日は大荷物だな。お前、いつもなんも持ってこないのに」
「いつも、ちょっとは持ってきてるわよ!……あのねぇ、笑わない?」
「えー。どーすっかなー」
「……やっぱり、いい。やめた」
「あ、嘘嘘。何だよ」
リディアは、少しおっかなびっくり、という表情で、バスケットの中から何やら生成の布に包まれたものを取り出した。
「ん?」
エッジに見せようかどうしようか、未だに悩んでいるようで、ゆっくりとその布を開ける。中から姿を覗かせたのは、茶色の何かよくわからない塊だ。
「これ、ローザのお母さんに教えてもらって」
「なんだこれ、菓子か」
「なんとかケーキっていうの」
「それじゃなんもわからないぞ」
多分それは立方体に近い形の型で焼いたものなのだろう。明らかにそれから切り分けた跡がある。
とても素朴な焼き菓子のようだ。
「何、これ、食っていいの」
「あ、全部はダメ。全部は。幻界にちょっと持って帰るから。待ってね、切るから」
そう言って、リディアは更にバスケットの奥から包みを取り出した。
エッジが見守る中、厳重に梱包されていたその包みを一枚二枚と開けていくと、なんと、様々なサイズのナイフが出てくる。
「なんだこれ」
「あのね、これ。そう。本当は、エッジにお願いがあって。でも、まずは切ってからね」
リディアはそのナイフで、少しばかりいびつな形にケーキを切り分けた。
「食っていいか?」
「どうぞ」
「いただきます」
仰々しく両手を合わせてエッジは深々と頭を下げ、手づかみでそのケーキを口に運んだ。
リディアは、それがなんだか恥ずかしいように、彼女にしてはべらべらと言い訳を並べ立てる。
「あのね、幻界にいても、その、魔法も召喚も全部覚えちゃったから、前よりはやることがなくてね、それで、アスラがわたしの部屋に、前よりもちゃんとしたかまどとか、そういうの、作ってくれてね。料理を覚えようかなって……前は、えーと、シルフ達が地上から材料とってきて、なんでもかんでもスープにしたものしか食べなかったし……それで、ローザのお母さんにお願いして……今度はちゃんとした料理を作る約束したの。今日はケーキにしたけど。あ、でも、材料量って、ぜーんぶ混ぜるだけなの。だから、何も凝ったこと出来なくて、だけど」
「うん。うめーよ」
「こういう凝ってないものでも、毎回出来上がるのって違うんだって。だから、何度も作りやすいものから始めた方がいいってローザの……え?今、エッジなんて言った?」
「おいしい、つったの。もう一切れ食べていいか?」
「ほんと?嬉しい!あ、切るね……はい」
リディアは満面の笑みをエッジに見せてから、あまり慣れてない風にケーキをまた切り分けた。
「俺、クリームが乗ってるやつだとか、酒がしみてるやつとか、あんまり好きじゃねーんだよな」
「知ってるわよ」
他愛のない会話。
おいしいと言われて笑顔を見せるリディア。
不器用な手つきでケーキを切り分けるリディア。
エッジの食の好みを、さらりと「知ってる」と答えるリディア。
それのすべてが、彼にとっての「相変わらず」で愛しいのに、会うことすらままならない
「執務してると、脳使いすぎるせいか、普段より甘いものが食べたくなってな。これ、また作ったら持ってきてくれよ」
「ほんと?また味見してくれる?」
「ああ」
「それから、これ。ローザが、エッジに手入れをお願いしたらいいって教えてくれて」
リディアは、今自分がケーキを切ったナイフその他、持ち込んでいた刃物類を指差した。
「ローザのお母さんが昔使っていたんだって。手入れすればまた使えるから、ってくれたの」
エッジはその刃物類を手にとって、念入りに眺めてから小さく笑う。
「あー、磨いでやるよ。今日はちょっと時間がないから、後で取りに来てくれるか?それとも、すぐ持ち帰らないと不便か?」
「大丈夫。幻界で使ってるのがあるから。でも、ちょっと大きくて使いにくかったの」
「お前の手だと、こんくらいのがいいのかもな」
まるで、いつもと何も変わりがないように、エッジは冷静を装って会話を続けていた。
が、本当は違うのだ。
(なんだもう、俺は、ガキみたいに)
今日、二度目の同じような突っ込みを自分にいれるエッジ。
突然やってきたリディア、突然やってきた「好きな子が作った菓子」に舞いあがる自分。
そして、突然やってきた「次の約束」。それも二つ。
ケーキを焼いたら、また持ってきてくれ。
刃を磨ぐから、取りにきてくれ。
どちらも、あまりにあっさりとしたとても小さな約束だけれど、それは彼らにとってはなかなか出来ない、会うためにうってつけの約束だ。
癇癪をおこして、公務を放り投げずにここにいてよかった、とエッジは心底自分自身に感謝した。それから、多分何かを見透かしたのだろうローザに。
(相変わらずあの女は、気が利きすぎて怖い)
それでも、本当はその気になれば、ナイフやら包丁の手入れだって、ローザの母親が教えられるに違いないのだ。それをしないで、わざわざエッジのものへ持ってこさせるあたりが、やはりローザの手腕というか、策略というか。
それには、さすがにエッジも素直にありがたいと思えた。
「そうだ、茶でも飲むか、茶」
「あ、うん。エッジは、お仕事大丈夫なの?」
「いつも大丈夫だって」
「嘘よ。この前来た時、なんだっけ、えっけん?の人が多いから、一刻以上は待たなきゃダメって言われたんだもの」
「あー……あの日は、悪かった。お前せっかく来てくれたのに」
「でも、今度はお料理、置いていけるし」
「バッカ。料理だけ置いていっても、お前に感想言えないだろ」
「あ、そっか」
エッジは女中を呼び、二人分の茶を頼んだ。と、出て行こうとした女中を引き止めて
「おい、これもう一口分もらっていいか?」
「え?いいよ?リヴァイアサンとアスラの分は残しておいてね」
エッジは心の中で「あいつらこんなもん食うのかよ」と悪態をつきつつ、雑にケーキを切り分けた。
「これ、爺んとこ持っていってやってくれ」
「かしこまりました」
女中は素直にそう言うと、薄紙にケーキを包んで、一礼をして部屋を出て行った。
「爺やさん、甘いもの食べるの?」
「食う食う。いい賄賂になるわ」
エッジはにやけた笑みをリディアに向けたが、彼女はその悪意のある笑みの意味を知るはずがない。
「わいろ?」
「いやいや、こっちの話。で、ローザにも会ってきたんだろ?どうだった?相変わらずか?」
「あっ、うん。ローザね、ずっとお母さんのところに行ってなかったみたいだったんだけどね……」
するりと話題を逸らすエッジにごまかされて、リディアはそのままバロンでのことを話し始めた。
とりたてて、特別なことのない会話。
リディアが笑って話して、エッジが時には茶化して怒られて、また二人で笑って。
ちょっとの努力をしなければこの時間を自分達は得られないのだ、と最近は思い知らされてばかりだ。
(もっともっと、約束を作ろう)
バロンの様子を話すリディアの顔を見ながら、少しだけ上の空でエッジは考える。
自由にならない環境。
不安にならざるを得ない関係。
どちらから抜け出すのも、今のお互いには少し難しすぎると彼は思う。
リディアは、会いたいと思って時々会いに着てくれている。けれど、「会いたい」という気持ち以外に言い訳が出来る、体裁を整える用事がなければ、自分を殺して幻界に戻ってしまうのだ。
だから。
用事があるから、と彼女自身にも、エッジの周囲にも言えるように。
「お茶をお持ちしました」
茶器を用意して戻ってきた女中の目配せで、爺を丸め込んだらしいことがエッジに伝わる。
多分、爺もうるさく言いたくないのだろう。
だから、爺にとっても。
『それならば仕方ありませんな。今回は大目に見てあげましょうぞ』なんて、渋々でも言えるようにお膳立てしてあげられれば良いのだと思う。
「エッジ?」
「あ?ん?何だ」
「何、考えてるの?」
少しばかり不安げに、上目遣いでリディアはエッジを見る。
「ん?お前も、やれば料理できるんだなーと思ってさ。もっと上手になっちまうのかな」
「なるつもりよ!そうだ。そのうち、エブラーナのお料理も、誰かに教わりたいなぁ。ローザがね、この前トロイアに行った時に、トロイアのお料理を教わってきたんだって。いろんな国の料理に挑戦してみたいって言ってた。わたしも真似したい!」
それを聞いて、エッジは小さく笑い声を漏らした。
「お前、量って混ぜて焼くだけの菓子作っただけなのに、言うことでけぇなあ。でも、いいぜ。お前が朝昼晩と、違う料理を自信持って作れるようになったら、エブラーナの料理、教えてやる」
「本当?」
「本当」
「約束してくれる?」
「約束する」
リディアは、ふふっ、と小さく笑い声をあげた。少しはにかんだような可愛らしい笑み。
もしかしたら、とエッジは思う。
リディアもまた、こうやってエッジと約束をしたいと思ってくれていたのではないか、なんて。
もしも、そうであったら、自分達の関係を変えるのは、そう遠くないのかもしれない。
エッジは茶を飲んで、次は断りもなしにもう一切れケーキを切って口に運んだ。



数日後。
「ローザ、そろそろ時間だよ。出られるかい?」
「ええ、もちろんよ」
バロン王となったセシルは、いつものように王妃ローザの部屋に、自ら迎えに赴いた。
それは彼らの日常だ。
朝食を食べた後に一度自室に戻る二人は、昼までに謁見の予定がある場合は、更なる身支度を整えるため、その後セシルがローザを迎えに行き、連れ添って謁見の間に向かう。
「あれ?その髪飾り、珍しいデザインだね」
「ふふ、もう気づいたの?驚いた」
「だって、君の装いは、いつも楽しみで」
「あら、じゃあ気を抜けないわね」
「そこまで頑張らなくていいよ。だって、同じドレスを着ても、違うドレスを着ているように、何か工夫をしてるじゃないか。すごいなって思ってさ」
バロン国もまた、エブラーナと同じく財政の立て直しなどを行っている。
ローザはその国の王妃として贅沢はしない、と、先代王妃が残したドレスや布を直し、二度でも三度でもそれらをうまく着回すように心掛けている。
セシルは申し訳なく思いつつ、せめて毎日彼女のその装いの工夫に気付いたり声をかけようと心掛けているのだ。
「これ、エブラーナでしか採れない石を使ったものなのよ。こんな色の石、見たことないわ」
二人は部屋を出て、謁見の間に向かいながら話を続ける。
「まさかとは思うけど、この前エブラーナに飛空艇を輸出する話を…・・・」
「やあね。賄賂だとでも思ったの?わたしは、政治の世界にそんなものを持ち込む気はないわ」
「よかった。ごめん、ちょっと気になって」
「別の賄賂よ」
「え?」
一瞬ぽかんとするセシルに、ローザは笑いかけた。
「今日のお茶の時間にでも話すわ」
「なんだか、裏がありそうだ。エッジが絡んでるってことは、リディアの話かな」
「バロン国王は察しの良い人物だと有名よ」
「聞いたことがない、そんなこと」
セシルはそう言いながら笑うと、軽くローザに口付けた。
「次にリディアが来るときは、僕も呼んでくれよ」
「そのために執務、頑張ってね」
「いつも頑張ってるつもりなんだけどなぁ」
どうやらここにも一人、公務を放り投げてもリディアに会いたがっている人物がいるようだった。
ローザはセシルの腕に自分の腕を絡めて、くすくすと笑った。








モドル