女であり雌であるんだ-2-

 

ただ俺は、何にも望んじゃいない。

遠くから眺めるだけでいい 俺なんかの存在なんて気づかなくていい むしろ気づいてほしくない

よく変わる彼女の表情を眺める。笑ったり、怒ってみせたり、困って眉間に皴を寄せていたり、

なんだ普通と変わらない。むしろ彼女の周りに比べたら、表情は豊かなように見えるのだが

だが俺は、こう思うんだ。 あれは 本当の彼女自身なのか・・・・

俺には、その表情が一つにしか見えないんだ。それはいっつも同じで感情のかけらもない、瞳には何にも映ってない

無表情だ。 これが、本来の姿で彼女は幾通りの仮面を持っているだけではないか

俺は、そんな彼女を「黒点」とひそかに呼んだ

黒点のナンナ

どっちが本当のおまえなんだ 

 

むしゃくしゃして俺は、頭をかきむしった。

第一干渉されることの嫌いな俺が、なぜ赤の他人同然の彼女のこと考えているのだろう。

赤の他人 いや俺とナンナは従兄妹だ

だからって それがなんだっていうんだ

それに、彼女は俺のこと間違いなくいいようには思ってないだろう

初めて、顔をあわせたとき 俺はものすごくぶっきらぼうな態度を取ったし、冷たくした

そこまでしなくてもよかったか・・・

あとで少し後悔した。 でも、あの時から俺はナンナに何かを感じ取っていたんだ。

それは好意ではない。明らかに嫌悪の方だ

でも、気づけば 目に付くと彼女の姿を目で追うようになっていた

俺は、矛盾している。

そしてこう考えている俺もいる

きっかけさえあれば、ナンナに話しかけてみようか

やめよう バカらしい どうしてしまったんだ

十分満足じゃないか。 今もこれからも俺は独りだ。そうやって生きてきた。生きるために少し労力を費やし

暇な日は、うまい酒を飲みながら時間が経てばいい、

チクショウ!!! なんだっていうんだ
 

「・・・ということだ 以上 質問のあるものはいるか。」
 

とくに手を上げるものもいなく、会議は終了した。

はっきりいってこれっぽっちも聞いていなかった。 

 

貴方がエルトシャン王の子アレスですか・・・

 

ああ そうだ 俺の父親はノディオン家の王エルトシャン 俺はその息子アレス

今じゃあ 食いつなぐために剣を振り、そのために汚いことは嫌とも思わずやってきた 面汚しさ

栄光なんて過去のもの 

でもそれがなんだっていうんだ??

俺は俺だ   
 

ドンッ!!
 

おもむろに開け放ったドアに誰かぶつかってしまったようだ。

物思いにふけっていた俺は、現実に引き戻される
 

「すまない。」
 

俺は、あたりに散らばったプリントを拾い集めた。顔を上げるとそこにいたのはナンナだった

なんて罰が悪いんだ。今まで考えていたこと全てをかき消すように 俺は急いで拾い集めるとナンナに手渡した。

しかし、あいつは、俺のことなんてお構いなしだ。 それどころか俺自身にも気づいていない。

遠くをボンヤリ眺めている

俺は、あいつの視線の方向に目をやった
 

あいつの父親とあとアルテナか・・・ 

 

そして俺はナンナに眼をやった
 

俺は息を呑んだ

今まで見たことのないような目だった

ナンナの目には、憎悪の炎と狂気で満ちていた。それは凍てつく刃の視線となって彼らに向けられていたんだ

拳は力いっぱい握られていて、体は、激しい怒りで震え 唇は切れてしまうかと思うくらいかみしめられていた

その時のナンナは、羅刹と化していた。
 

「ナンナ。」

俺は、少し大きな声でナンナを呼んだ。


あわてた様子は、微塵もみせずに俺がつきわたしたプリントを受け取る

 

「ありがとう。」
 

全然違った

そういうとナンナは、頭を下げて廊下へと出ていった。俺はその後姿を消えるまで見ていた
 

あいつ・・・ 自分でまったく自覚していない・・ 分かってない

なにか起こる  絶対何かしでかす・・
 

何故、そう思ったのか・・ 分からないが なにか確信めいたものが俺の中にはあった

胸騒ぎがする・・・・

あんまりよくないことなのだが、俺は、胸騒ぎや不安を感じると 必ず何かしら事が起こる

それは大抵悪いことだ。 その前兆や微妙な空気をよみとる 能力が俺にはあった。

なぜ、肉親とそれに近い関係のものにあれほどにまで まるで敵を呪うような

しかも、あそこまで感情をあらわにしたナンナははじめてだった 
    

俺は、その場から、ある人の姿を探した
 

「おい!! おまえ!!。」

「のわぁっ!! なんだよ!!。」
 

俺は、リーフの首根っこをつかんで引き寄せた。
 

「最近、ナンナのやつかわった様子はなかったか??。」

「えっ?? いつもとかわんないんじゃないの??。」
 

でもなぜと質問を質問返しされて俺は少し戸惑った
    

「おまえ、ナンナの一応主人であり幼馴染なんだろ。」

「あはっ 一応ねぇ でも全然ナンナの方ができがよくって 僕よりナンナがレンスターの王にあってんじゃないの

かなぁ〜って思うときさえあるよ。」
 

リーフは、とっさに自分の言った失言に口を塞ぎあたりを見回すと今言った事秘密だからと耳打ちすると舌を出した

俺は相談相手を間違えたみたいだと分かりその場から離れようとした時しっかりと腕をつかまれた
 

「ふぅ〜〜〜〜〜ん そういうことか ハイハイ。」
 

好奇心に飛んだ悪戯そうな顔を見るとやはり誤解されているみたいだ。

このままいくとこのガキにへんな感じに誘導尋問され、ゴシップ好きの女達に次々と広まる恐れがある
 

「とにかくだ お前の考えているようなことは一切ない!! でもナンナのことしっかり見ておけ!!。」
 

俺は、リーフの耳を引っ張るとお灸をすえてやった

俺から逃げるようにリーフは、風の様な速さで離れると、時にこちらを向いてニタニタと笑みを浮かべながら

廊下をスキップでかけていった
 

フィンとアルテナはまだ話し込んでいた。作戦を綿密にチェックしているようだ。

顔は、お互い真剣そのものだ。

そして、今はもういないが、ナンナがいたその場所へ目を移した

ボンヤリとナンナの影が映る 

あの瞳は 
 

ソウ・・ アレハ・・・   

アノ・・・・  スガタハ・・・・ アナタ・・・・ アノトキノ・・・
 

だめだ!!!

俺は、目を開けた ナンナの影はなく、その時には、会議室にはもう誰一人も残っていなく

がらんとした部屋は、広く、シーンと静まり返った部屋に俺のため息が響いた。

今までセリスが座っていた立派な皮の椅子に手をかけたが座ろうとはせずにそのまま壁にもたれ掛かって

暫く、外の景色を眺めていた 

それから 俺は、まるで監視のごとくナンナを見つけると目で追った。

ただ、周りの動きも慌しく、相次ぐ戦で なんといっても駒を進めるたびに、解放軍へ入隊を希望するものも増え

あっという間に、今までの倍にも兵の人数は膨れ上がり、城は、日々人でごった返していた。

そんな中でナンナを見つけるのは難しい ナンナ探しがある意味俺の日課であった
 

「動き出さないかぎり つかまんないよ〜。」
 

そう茶々を入れるリーフに拳骨を食わした

涙目で、俺を睨み付けながら去っていく。リーフの姿をみたら急に笑いがこみ上げてきた

表面や声に出しては笑うことはなかったが、ただひたすら可笑しかった

こんな目にあいながらもリーフは俺にちょこちょこちょっかいを出してきたり、一人でべらべら喋りながら

満足して帰っていく。柄にもなく俺は、リーフに嫉妬した。 俺もあいつみたいになれれば そうすれば

でも無理だ。 俺には無理だ。 どうして無理なのかわからない

俺は、自分を表現できないし、いいたい事を言葉にできない。

言葉のキャッチボールができない。自分から投げ出すことはまずできない。相手からきたとしても、受けるばっかりで

返すことができない、それが積もりに積もって俺はなげだしてしまう

でも、リーフは、もしかしたらはじめて軍に入ってまともに喋ったやつかもしれない

いつもあっけらかんとしているリーフだが、自分がいかに人を惹き付けるように、言葉を巧みに操り、他人の話にも

耳を向けそれを10にも100にもしてしまう。

それは、一種の才能 能力だ。 俺が物事の吉凶を予知する能力があるように 
 

「ねぇ アレス殿?? アレス?? 聞いてますか??。」
 

フードから心配そうにアルテナが俺を覗いた。

少し休憩でもいたしましょうか?? そうアルテナは親切に言ってきたが、俺は断った。
 

次の進軍地の偵察部隊の指揮官として俺とアルテナはここにいる、他に数名の兵も民間人として

紛れ込んでいる。俺は、今回の偵察に自分から挙手した。

周囲から驚きと不審の混じった声が聞こえる まぁ当たり前だろうと思う

俺は、解放軍の指揮下にあるが、未だに雇われ傭兵の身分だ

いつ裏切り、逃げ出すかわからない。 だからまわりの反応は正しい

すると横からもう一人手を上げたものがいた。 それがアルテナだった。

移動力と攻撃力に優れたドラゴンマスターの彼女にとって偵察は打ってつけだろう。

しかし、ここは彼女が数十年育ってきた土地であり、名とともに顔も知れ渡っている

それは危険だ。 かといって彼女より詳しくこの土地を知っているものはこの精鋭部隊の中にはいない

それに、はやく軍に馴染みたいという彼女の私情も少なからずあるのだろう。

昨日の友は、今日の敵ともいうのであろうか。 彼女は生まれ育った土地を敵にまわした

はっきりいってしまえば恩を仇でかえすようなものだ。だが彼女の両親は、トラキアの王により殺され

子としての愛情を持って育てられたのかわからないが、軍事力として利用されていたことは確かだ

こんな 俺が言うのもなんなのだが 複雑だろう    
 

そんなアルテナは、一つの露店に目を立ち止まった

そして数枚の硬貨と一つの鉢植えを引き換えて走って戻ってきた。

「すみません おまたせしました。」

「いや、実際待った時間なんてほんの数分、たしかに敵の支配下 しかも任務中に買い物なんて

不謹慎だという奴はいるだろうが、 俺はまったくかまわない。」
 

アリガトウと花が咲き零れるような笑顔をアルテナは俺に向けた

持っていた鉢は、ちょうど彼女の手に納まるくらいの大きさで 小さな花とつぼみが幾らかついていた

バラのようだが、それにしては小さすぎる

「これはプライム・ローズといって バラの一種なのです。」
 

そういうとアルテナは花の香りを嗅ぎ満足そうな顔をした
 

「まるでこの花は、彼女 ナンナのよう。」

「ナンナ??。」

「ええ、 純真で無垢で愛らしい 今はこの花のように小さいのですが きっと数年後には大輪の

白く美しいバラとなり人々の目を惹くことでしょう。」
 

バラか・・彼女の目にはナンナがそう映っているのか 小さなバラの花びらから雫がこぼれた
 

「私は、うれしいのです。自分に本当の妹ができたみたいで とてもうれしいのです。」
 

その時、頭を掠めたのは、あの時の顔を強張らせたナンナの表情だった

あれをみてしまっては、ナンナがアルテナと同様に姉として慕っているとは、安易には思えなかった

だから俺は、そのあとの言葉に詰まってしまい それから何もいえなかった 


 

偵察から戻ってきた時 一番に駆けつけたのはナンナだった。

その後ろからリーフとフィンもやってきた。 俺だけだろうか  その空間に緊張した。

お疲れ様です と我々に声をかけるナンナに すかさずアルテナは鉢のプレゼントを渡した
 

「ありがとうございます。 かわいらしいプライム・ローズですね。」

「よかった。 気に入ってもらえたようで。」

「はい 宝物にいたします。」

「ありがとうナンナ。」

「これは、もともと野に咲いていたものを鉢植えたようですね。 そろそろ間引きしなくては・・。」

「そうなのですか・・。」  
 

拍子抜けだ

たぶん 他の者から見た俺は、間抜けな顔をしていたに違いない

俺が想像していたのはとげがあり余所余所しいもの それとはまったく違って 和やかなムード

語り合いながら城へと入っていく二人の姿を見ていたら

なんであんなことを感じたのだろう 考えたのだろう

彼らの関係を詮索していた今までの自分がバカバカしく思えて 恥ずかしかった

そして、ひどくナンナを誤解していたことを悪く思った

このことは、俺の中で勝手に勘違いをして、適当に彼らの仲を推測し 思い違いをしていた

彼女達はほんとの姉妹のように仲むつまじく

あの時のナンナはもしかしたら具合が悪かったのか 俺の目の錯覚だろう

今回の前兆は外れたんだ よかったじゃないか

一瞬にして 体の緊張がほぐれ 俺は安堵からかため息をついた
 

「ちなみに 今日アレスがいなかったから 俺がナンナをじっくり見てたけど いたって変わったことなかったし

男と親しくてた場面なんて全然なかったから安心してよ!!。」
 

ぽんぽんと俺の肩を叩くリーフ その手首を掴んで俺はねじった
 

「いててて!! この乱暴者!!!!!!!!!!!。」
 

俺はわめくリーフを完全に無視して城の中に入った

文句をたらしながらも俺の後ろについてリーフも城の中に入った
 

「ナンナを見張ってろっていったがもうやめていい 俺の勘違いだった。」

「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 何でなんでなんでぇ?????????。」
 

リーフは走って俺に追いつくと俺に並んで顔を覗き込んで何度も尋ねてきた
 

「何でもだ・・。」
 

俺は、立ち止まると、リーフの方へ顔をやり大きな眼を見つめた
 

「ふ〜ん そっか。」
 

暫く 黙ってから返事をしたのは、それなりにリーフの中で理解をしてからの返事だったのだろう

じゃあ 俺こっちに行くからとリーフは、俺に背を向けて走っていった

   

その時は、思いもしなかった

俺にしては、あまりにも警戒がなかった。 

いや、もしかしたら自分の中で必死になかったこととし無意識のうちに終わらせたかったのかもしれない

確実にナンナのねっとりとした深い闇は彼女を蝕んでいた

あの時 アルテナにみせた笑顔は、彼女の非常に精巧につくられた仮面の一つだったからだ

 

ナンナは女優というよりも道化師だった・・・

 

前にも言ったとおり 俺は、この事態を無意識的にさけたため

この後 起こった出来事は予想もできなかったわけで

結局 その出来事は 俺の推測を確定づけるものとなった

 

白 白が当たりに広がっている

それは、よりいっそう広がっていった

ナンナが、バラを切り落としていくたびに

無心に手当たり次第花を切り落としていく そしてその花ビラを手で一枚一枚ちぎっては落としてゆく
 

アラ アレス 
 

ホラミテ ステキナバラデショ??
 

遠くから 彼女の声が聞こえる

その時まで なぜナンナの行く先に向かっているのだろうとか

ただ、自分の部屋に向かう途中であるから たとえ会ったとしてもおかしくないだろうとか

少し声をかけてみるべきだろうかとか

そんな風に悩んでいたことはもうどうでもよかった
 

無残に切り刻まれてゆくプライム・ローズ
 

紙ふぶきのように散っていく花びら
 

時々口ずさみ 何度も繰り返されるメロディー
 

握り潰すようにしていたため棘が手に食い込みナンナの手から真っ赤な血が滴り落ちて白と雑じる
 

白 赤 白 赤
 

そして冷たい光を帯びたナンナの青の瞳
 

それが俺の頭でグルグルとかきまわされて 思考もうまく働かない 

ああ  ナンナってこんなにいい笑顔もできるのか と思っていた

そのナンナの行為は間引きと見せかけた、殺意 狂気のあらわれ  

しかし 俺は ずっと昔から知ってたんだ

ソウ・・・ ソレハ・・ あの人の姿・・・

 

ドアを開け放った瞬間 立っていたのはナンナではなかった

ナンナ自身であったのだが 俺の目に映し出されたのはナンナではなかった
 

そこにいたのは
 

ペーパーナイフで何度も自分の腕を刺しながら 微笑んで 俺の名を呼ぶ
 

母の姿だった・・・


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モドル

第二弾をいただきました〜vv
ダーク系FE、このサイトでも久しく書いていなかったので、わくわくしながら
読ませていただきましたvv
chikaさん、ありがとうございます!!続き楽しみにしてますよ〜