【刀剣乱舞】陸奥燭練習@

歴史とかアレコレ背景調べる気はないので、間違いもあるかと思いますが
ひとまず、陸奥の土佐弁意識してどんだけ書けるかなっていう練習なんだけども……
一発書き推敲なしで、大体3時間もかかってしまった。こりゃあ難儀すぎる土佐弁。
おかげで描写大好きマンなのに背景も心象もなんも描写出来る余裕ナッシング。
吉行、光忠、って書いたけど、吉行表示もしっくりこないなー。
なんにせよ習作。

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 馬当番も畑仕事も、陸奥守吉行と行えばいつもスムーズだ。
 刀の中では文句を言う者もいるし、仕方がないこととはいえ、向き不向きがある。光忠は自分が「向いている」とは思っていなかったが、自分が存外器用だということは自覚をしている。だから、馬の世話や畑仕事もすんなり自分がこなせることは驚かなかった。もちろん、最初にそれらを教えてくれたのが吉行であることが大きいことも理解している。
「まっことしょうえい天気じゃあ」
「そうだね。晴れが続きすぎるのも考えものだけど」
「そうやねゃ」
 基本、畑仕事に関しては、ほとんど天候に任せっきりであったが、少し土が乾きすぎていると主に声をかけられた。それならば、と彼らは水を撒きにやってきたのだ。
「ホースちゅうもんがありゃあええが」
「小屋にあった気がする。それとは別に、井戸からも水を汲み上げて撒こうか。柄杓のようなものがあれば」
「それこそ、小屋にあっつろうがや」
「ああ、そうかも」
 ひとつきもすれば、吉行の土佐弁は光忠に大体通じるようになっていた。
 光忠はいくつかの主のもとを流れた刀で、その主の出身地、居住地も様々だったため、人の世界に方言があることを良く知っていた。けれど、吉行の言葉は彼が知っているどれとも違っていた。それは、時代のせいで話し言葉が変わっていった、というものではない。初めて聞いた時、これは知らない場所の言葉だ、と感じたし、それは正しい。
 一方の吉行はというと、自分の言葉が土佐の言葉であることはとうに理解をしていたし、それが他の刀からは珍しがられるだろうこともわかっていた。そもそも、彼を代々大切にしていたという昔の主は生まれ故郷から離れ、あちらこちらの言葉が違う場所に行っていたという。実際に吉行がそれを共にした期間は短かったというが、その時間は濃密で、彼は「自分の主と言葉が違う人々の言葉」をとてもよく理解していた。
 話は逸れたが、吉行にとって光忠は「本丸の中で一番、吉行の言葉の意味を聞き返さずに理解してくれた刀」で、それは光忠もわかっている。主は「ほとんどみんな今の時代共通に近い話し言葉になっているのに、陸奥守は土佐弁を愛していたんだねぇ」と、不思議そうに言っていたが、なんにせよ吉行の土佐弁はとても彼に似合っている、と光忠は思う。
「これこれ!」
 農具等を置いている小屋からホースと桶、柄杓を持ちだした吉行は、早速ホースを畑近くの水道の蛇口に取り付けた。その隙に、光忠は吉行が放り投げた桶と柄杓を拾って歩き出す。
「いくぜよーー」
「じゃあ、僕は井戸から汲んでくるから」
「おっと、そうじゃった、わしも手伝うき……」
「大丈夫。葉がまだ若いやつには僕が撒くから、このあたりの分は頼んだよ」
「うっし!」
 まったく、楽しそうで何よりだ。
 光忠は少し離れた場所にある井戸に向かった。
 近侍の吉行は出陣の機会が多いし、光忠も共に行くことが多い。光忠がこの本丸に来た時は、吉行と加州清光、歌仙兼定、それから薬研藤四郎を筆頭に短刀達がいくらか。今はもっと人数が増え、脇差も抜刀も太刀も揃っているし、先日は太郎太刀がやってきたばかり。
 今日は、やってきて日が浅いにっかり青江と太郎太刀を、歌仙と薬研が他短刀達と連れ出して様子を見てくれている。
 ここ最近続けて出陣をしていた吉行と光忠を休ませてやろうと言う意図が見え見えだが、素直にその気持は嬉しいと光忠は思う。刀は戦ってなんぼ、と言う者も多い。けれども、戦わない日が退屈だとはこれっぽっちも彼は感じない。こういう日も良いものだ。
 からからと井戸の底から水を汲み上げ、これもこれで筋肉の強化になるものだ、なんて思いつつ畑に戻る。
「うおーーい、みつただあーーー、みい!」
「うん? 戻ったよ。今からこっちも……」
「虹じゃあー!」
「……わあ」
 太陽の光を背に、ホースの先を指で潰して水飛沫を飛び散らせる吉行。
 その水飛沫の中に、薄く虹が見える。
「ここんとこ、こうやらんと」
ホースの先を指さす吉行。
「綺麗だね」
「まっこと! きれえぜよ」
 明るく笑う吉行を見て、光忠の口端もほころぶ。
 無邪気というのではない。いや、確かに彼にはあまり邪気はない。
 時折彼のことを「陸奥は脳天気でいいよなあ」なんてことを言う者がいることを光忠は知っている。多分、吉行本人ですら知っているのではないかと思う。みなそれには笑うだけだが、口にする者も笑う者も、それが間違った認識であることを理解している。それでも言わずにいられないほど、吉行の気性は彼らにとってなかなか貴重に思えるのだが。
 心底脳天気な刀なぞいない。鍛冶の際に、脳天気に彼らを打つ鍛冶人なぞいないからだ。刀として作り上げられる時から、彼らの本質は半分は決定される。どんな刀として生まれたかと、それに携わった鍛冶人の思いが彼らの何かを決定付ける。その先に残りの半分がどう転ぶかは、彼らを手にした主に依る。
 吉行のそれは、脳天気ではなくおおらかさと豪胆さだ。きっと彼の元の主は、そうそう何があっても臣下や小姓を切る人間ではなかったのだろうと光忠は思う。
 なんにせよ、こんなに虹が似合う刀もいないだろう、と。
「君が嬉しそうで何よりだよ」
 そう笑って、光忠はまだ葉が柔らかくてホースの水では折れそうな植物達の元へと戻った。



「濡れぼちゃじゃあ」
「遊びすぎたんじゃないか」
「そがな……」
 否定をしようとして、一瞬吉行は口ごもった。否定出来なかった。
 ひととおり水を撒き終えた二人は、木陰で一休みをする。もう少しするときっと昼食の時間で、きっと食事当番の長谷部か五虎退が呼びに来てくれることだろう。
 服を濡らしすぎた吉行は、地面に膝をついてずりずりと前進する。少し木陰から出ると、自分の服の襟元を掴んでぱたぱたとはためかせた。
「光忠と畑仕事をするがは久しぶりじゃのう」
「そうだね」
「ここに大分慣れたようやか」
 こんな風に二人でゆっくり話すことは最近なかった、と光忠はふと思う。
 そういえば。
 吉行に聞きたいことがいくつかあった、と思い出して、それを今聞いてもよいものかと、少しだけ光忠は悩んだ。
「何しゆうが?」
「……少し、尋ねてもいいかい?」
「んっ?」
「僕は、君がとても清光と仲良くしていると思っているんだけれど」
「うん? 仲良うしゆうぜよ?」
「でも、君が新選組とやらの刀と仲良く出来ないと主に言っているのも、聞いたことがある。清光はそれなんだろう? 本人がそう教えてくれた」
「ああ」
 目を細めて笑う吉行。
 なんだ、そんなことか、という意味にもとれたが、何かの核心に触れられた者の表情にも思える。
 光忠はそこで言葉を切った。
 吉行は察しが良すぎる男だ。万屋に行くと主が言えば、笑いながらあっさりと「商談ならわしに任せちょけ」と言うのは冗談でもなんでもない、彼の自信がそのまま言葉になって現れたもの。察しが悪い人間が商談を得意とするわけはない。
 刀として生まれ、生きてきた長さは関係がない。彼らがここで付喪神として、人に限りなく近くなってからの長さだけに依存するわけではない。吉行の察しのよさや、聡さはもともと持ち合わせているものだ。彼がどのように人間というものに関わってきたのかを光忠はもちろん知らないが、吉行は時に恐ろしく鋭く、時に恐ろしく鈍い。
 それを一度主に世間話のようにふってみたら、彼らの主は何一つ驚きも悩みもせず「近侍に適任だろう?」とあっさりと返したのだが。
「わしは、ちくと勘違いしとったようじゃ」
「勘違い?」
「うむ。主が片目をつぶっとったら、志を同じにしちゅうあいつらもぶっちゅう……同じ、と思っとった。が、そいつは勘違いぜよ」
 主が片目を。
 光忠は一瞬、それは自分のことか、と眉根を潜めた。が、それはきっと吉行の比喩なのだろうとすぐに気付いた。
 そして、そんな風に光忠が勘違いをするだろうことを、豪胆でおおらかな割に気が回る吉行が気づかないはずがない、とも思う。
 ならば、きっと彼が口にしたその比喩は、「絶対」なのだ。彼が口にした「片目を瞑る」という言葉は、吉行にとって一番しっくりくる比喩、あるいは、ずっとそう思い続けていて他には言い換えられない比喩なのだと、はっきりとではないがおぼろげに光忠は理解をした。
「おんしのいつぞやの主は、片目だったと聞いたけんど……片目しかなくても、両目を開けとるもんもおるぜよ」
 吉行のその言葉に、光忠は「ああ」と、肯定とも否定ともつかない曖昧な声を漏らした。
「お、五虎退が。にゃはは、飯は何じゃろう?」
 話は終わっていない。
 が、屋敷の方から五虎退が小走りで近寄ってくる姿が見え、吉行は腰を浮かせた。
「はぐらかしとらんよ。腹が減ってきたちや」
「うん。良かったらまた後で。さすがに僕も腹は減った」
 光忠も立ち上がり、木陰から出る。
 見れば、吉行はさっさと走りだし、やってきた五虎退に虹を見せてやると言い、無駄な水を噴出させていた。
(片目しかなくても、両目を開けている者もいる)
 それは、まさしく吉行が指摘したように、一時期自分の主だった人物のことではないか。
 そしてきっと、吉行の主は。
「冷たいですうーー!」
 ホースの水を少し浴びてしまった五虎退が叫ぶと、朗らかな笑い声と「すまんすまん!」と悪気のない声が響く。
 ああ、本当に彼には虹が似合う。
 後でそれを本人にも伝えよう、と光忠は近くに置いたままだった柄杓と桶を手に取った。




脈絡なく終わる。


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