城壁

モクジ

  1  

 荒廃したゼノビアには、昔の王都だった面影はない。
 ……ということはウォーレンやランスロットが言っていたことで、ソニアにはわからなかった。
 かくいうランスロットだって、24年前はまだ王宮騎士としてあがったばかりの見習いに毛が生えたものだったのだろうから、ゼノビア全体のことについて詳しかったのかどうかは怪しい話だ。ともあれ、彼ら二人を中心として帝国の手におちる前のゼノビアを知る者達は、王都のあまりの変貌ぶりに嘆き悲しみ、よりいっそう帝国への反発をつのらせるのだった。
 ゼノビアは高い城壁に囲まれて、都市の中で何が行われているかわからない状態だったが、周辺の都市はスラム化していて本当にここが王都の恩恵をうけていた町なのかと目を疑うばかりだ。
 家屋はみな建て直しをしないまま古ぼけて、住むことが出来ないようなおんぼろなものが立ち並び、その当時流行っていたレンガ造りの壁はあちこち崩れ落ちているものがほとんどだった。
 帝国の手に落ちてから修復もされないまま、華やかだった町並みも手入れどころか足場がぼろぼろに崩れていたって何一つ直されてもいない。
「北西方向がゼノビアだ。あの城壁をどうするか、が課題だな」
 ミュルニークという都市を拠点にしたのはいいが、荒廃している町の人々は反乱軍だからといって諸手をあげて喜んでいるわけではない。
 帝国軍の圧政を退けられる、という期待の半面、彼らのせいで今よりもひどい状況になったらどうしよう、という危惧が人々の間で強く懸念されているのだろう。友好的とは断言出来ない民衆の反応に、正直なところウォーレンもランスロットも困っていた。
 これからの進攻ルートを決めるのに、ミュルニークの町にある防衛用の砦の中で彼らは頭を突き合せて考えていた。
「ともかくエルランゲンとアンベルグまで、町を解放しながら進まないと」
「情報によると」
 ウォーレンが言う。
「エルランゲンあたりは、ゼノビアに城壁が出来たことで更に帝国の動きへの不信感などが強まっている様子。ここ(ミュルニーク)のように中途半端に離れた都市よりも、そういった近い都市の方が案外協力的かもしれませんな」
「そうだと嬉しいのだけれど。……しかし、どうする。あの城壁」


「しっかし、お前の戦いっぷりは見ていて気分がいいな」
「カノープスの戦い振りは見ていて残念だ」
「うるせー!」
 ソニアの頭をこづくカノープス。
「だけど、頼りにしている」
「どっちだよ」
 そんな会話も最近はなれて来たものだ。
 ソニアの部隊には相変わらず有翼人種であるバルタンの風使いカノープスと、ナイトに昇格したビクター、それからウィザードのヘンドリクセンとクレリックのオーロラだ。前衛がソニアとビクター、後衛がヘンドリクセンとオーロラ。敵の構成によってはカノープスが前後に切り替わる、という部隊だ。
 ソニアが「残念だ」というのは、カノープスは後衛からはサンダーアローが使えるけれど、接近して使えない理由である「技の発生の遅さ」が問題なのであり、前衛のときはそのまま武器で攻撃するのだけれどバルタンであるカノープスはレイブンほど好戦的ではないために力を発揮しにくい。
 ソニアが敵を3体切りつけている間にカノープスはいいとこせいぜい2回ほどである。
が、それ以前にカノープスは部隊全員を抱きかかえて飛ぶ、という大変な役割があるのだからソニアの言葉は正しい。
「城壁をこえるために、レイブンやグリフォンの部隊ばかりを派遣しているようだな」
「さっきのさ、コカトリス中心の部隊は厄介だな」
「石になってしまうのは、気持ち悪くてかないません」
 そう言ってビクターはしかめっ面をした。
 旧王都ゼノビアは、都市を城壁で囲って外敵を防ぐように守りを固めている。
 そこには帝国の四天王のひとり、デボネア将軍がいるという。
 完全に城壁でかこって出入りする場所を制限しているから、やってくる敵部隊は城壁を超えることが出来るユニット構成だ。
 中でもコカトリスがいる部隊は厄介で、ペトロブレスで形を変えて石にされてしまうことがみな嫌な顔をする。
「あれはねー。体の密度を変えられる感触っていうの?あれは確かに気持ち悪い。」
 ソニアは同意してから、高い城壁をほこるゼノビアがある方向を見て、敵部隊の動きを確認するのだった。
まだまだ壁を越えてくる様子だ。


「城壁を壊すことが可能なものを手にいれてきたが」
 ランスロット隊と合流したのはアンベルグだった。そこここに家をもたない人々が溢れてはいたけれど、ウォーレンがいった通り人々が反乱軍に対して持っている期待値はかなり多いようだ。
 二部隊は顔をつきあわせて、何もない道の真ん中で話し合っていた。
「ここから南におりていった教会でもらったのだが」
「ああ、ウォーレンが書物で調べていたやつだな!本当にあったとは。」
 トロイの木馬と呼ばれるアイテムをソニアに見せるランスロット。それは出撃前に、もしもこれがあれば楽なのだが、と調べてぼやいていたものだ。
「これを使えば城壁が崩れるというが……」
「……ああ」
「ウォーレンも懸念していたけれど、城壁を壊すと地上部隊も出てくる危険性がある。そうすると今よりも戦火が広がるし、こちらも増援を出す必要が出てくるな。……スラム化している都市からの援助金は正直なところあまり多くない。部隊を増やすとそこがネックだな……」
 ランスロットはソニアにそう言ってお伺いをたてている。
「地震を巻き起こして城壁を取り去る、というマジックアイテムだと聞いた」
 ソニアは少し考えながら言う。
「これを使わないでこのまま戦を続けると、こちらも城壁越えをするための部隊編成のまま戦い続ける必要がある、ということか。」
 カノープスはバルタンだからまだしも、現在軍にはあとはホークマンとグリフォンのみしか空を飛ぶことが出来ない。
「デボネア将軍が馬鹿だといいんだけど」
「何が」
「ん?攻撃しやすい場所にいてくれるならいいんだけどな。そしたら、ホークマンが加わってちょっとくらい戦力が落ちてもなんとかなりそうだ」
 とソニアはまたも子供のようなことをいっていた。
「ありえないな……ウォーレンが占った結果だと、大きい生物の影がデボネア将軍の周りにいるというが」
「ドラゴンかヘルハウンドあたりだろうな。飛ぶ者達は出払うだろうし……まあ、オクトパスではないことは確かだろう。もしそうなら相当の馬鹿だ」
 言いながらソニアは想像してしまったらしく笑っていた。その不謹慎な笑いをランスロットにみつかったことに気付いて、さっとカノープスの後ろに隠れる。最近ソニアはちょっとばかりランスロットに怒られるタイミングがわかってきた様子だ。
「……で、ソニア殿、どうするんだ?」
 かく言うランスロットはランスロットで、それくらいのことで怒っていたらきりがないことをもう知っている。冷静な言葉でソニアにお伺いをたてる。
「使わない。それは。せっかくランスロットがもらって来たのに、申し訳ないけれど」
「いや、それは構わない。……何故、そのように?」
 カノープスが呑気に言う。
「城壁こわして、敵軍がいっぱい出てくるのが嫌なのか?それだってそうかどうかは不確定だし、もしかすると全然飛行部隊以外はいないかもしれないぞ?」
「それはありえないだろう」
 ランスロットは苦笑を見せた。
「わかんねーよ?」
くすくす、と笑うソニア。
「そうだったら、それこそデボネア将軍はただの阿呆だ。……そうではないと思う。四天王といわれるほどの男だ。きっと城壁を壊したら壊したで相当な地上部隊を編成しているに違いない」
「やっぱり、それを見越して城壁を崩さないと?」
 やはりな、という表情でランスロットはソニアを見た。ランスロットの部隊でもその話はちょっとでていたようで、ほかのメンバーまでもがリーダーに調子をあわせるかのように「やっぱりな」といいたそうだ。
「違うよ」
 それを簡単にソニアは否定をする。
「どれだけの規模の地震が起きると思ってるんだ。それを考えなければ、こっちの方が阿呆だ」
「だが、マジックアイテムだから、使用者が正しく使えば局部的な地震を起こすことが出来るだろう」
「それは推測の域を出ない。確かにウォーレンが調べてくれた本にはそう書いてあったけれど。ぶっつけ本番で使うにはリスクが大きすぎる。……誰に対してのリスクなのかは、わかっているだろう?」
 ランスロットは少しだけソニアをみつめて黙った。それから、ゆっくりと
「……周辺の民衆だ」
「それは、許さない。何のための反乱軍だ」
「ゼノビアの民の平和を取り戻すためだ」
「あたしは、未来のために、今の生活を犠牲にさせるようなことは許したくない」
 ソニアはランスロットからうけとっていたトロイの木馬をみつめた。それは小さなアイテムで、一体このアイテムを使っただけでどういう仕組みで地震が起きるのかまったく想像が出来ないようなものだった。
「それに、あの城壁は今後も使える」
「今後?」
「平和を取り戻したら、誰かが民衆を導かなければいけない。……今はこんなに荒廃しているけれど、地理的にも歴史的にも、再びこの大陸の王都を制定するとしたら間違いなくここだろう。……とっとくと、いい」
「ソニア殿……」
「それに」
 まだ、ソニアは言葉を続けた。あまり長く物を話すことが得意ではない彼女にしてはめずらしかった。
「これを作らせたのは帝国軍だけれど、作ったのはここにいる彼らだろう。きっと……今は帝国軍を守るための城壁になってしまっているけれど、本来彼らだって自分達が作ったものを自分達のためのものにしたいはずだ……たとえ帝国を守るための壁だとしても、あれが崩れてしまったら……多分悲しいんじゃないかな……そういう、悲しい、とか嬉しい、とかそういうことはあまり口に出したくないけれど。だけど、残念だが今のこのゼノビアの現状はあまりにもひどい。あとわずかでも彼らにそういう……マイナスの感情を与えたくはない。今後のためにもな」
 その場にいたものはみな言葉を失ってソニアを見つめた。
 言った本人は別段大層なことをいったつもりではなく、理由を聞かれたからこたえたよ、程度にしか思っていないようで、周囲の沈黙に気付いてきょとんとしている。
「さ……」
 仕方ない、とばかりにカノープスが無理矢理声を出した。
「さっすが、リーダー、いいこというじゃねえか。リーダーってのも伊達じゃねえな」
「いいこと?……まあ、これがあたしの理由だけれど……ほかに何か思うことがあったら言ってくれ。ランスロットはどう思う?」
「……そなたがそう決めたならば、従おう。わたしがしなければいけないことはその次で……。あの城壁を乗り越える編成の部隊で、かつデボネア将軍を打ち倒せる部隊を考えることが必要だからな。」
「うん。そうだな。でも、それはあたしとランスロットの部隊だけでなんとかなると思う。……本当は、ウィザードかサムライ中心の部隊がいいんだけど」
 ソニアが言いたいことは誰もがわかっていた。
 今までの帝国軍の様子を見れば、きっとデボネア将軍もその指揮力を発揮するために前衛をかためて自身は後衛から戦の指示を出しながら攻撃してくるタイプに違いない。
 そういう相手には遠距離攻撃が可能なウィザードやヴァルキリー、あるいはサムライのソニックブームを使うのがこちらとしては常套手段だ。
「ドールマスターとウィザードとサムライにグリフォンをつける、というのも悪くないんだけど、体力的に不安だしなあ。ま、なんとかなるだろう」
「しかし、城壁越えをしたって実際の砦までに距離があるから1,2部隊では足りないだろうな」
「うん。1部隊陽動部隊を作ってまかせたい。それはランスロットが決めてくれ。あとは、あたしの部隊とランスロットの部隊で回り込んでいこう」
「し、しかし私の部隊もソニア殿の部隊も、あまり遠距離攻撃が得手のものは……」
「大丈夫だよ、ランスロット。……前衛をなんとかして欲しい。あたしの部隊と交代しながら何度かアタックする気でいて欲しい」
 嫌な予感がする、とランスロットは眉をひそめてソニアを見た。ソニアはもうそれをランスロットに完全に依頼した、ということにして背を向けた。
「ビクター達はちょっと休憩していていいよ。そっちの角をまがっていくと井戸がある。ちょっとだけ水分をとっておくといい」
「はい」
「ハイネ達も」
「はい。では、お言葉に甘えて失礼いたします」
 自分の部隊メンバーにもランスロットの部隊メンバーにも声をかけて指示を出す。一緒にそっちにいこうとしたカノープスの羽根を後ろからソニアは引っ張った。
「いてーな!なんだよ」
「カノープス、ミュルニーク方向の戦況を見て来てくれ!レイモンドとウォーレンの部隊だけで間に合っているか心配だ」
「あいよ」
 カノープスは大きく翼を広げて空に飛び立った。それをしばしみているソニアの腕をランスロットは掴んで振り向かせた。あまり大きい声で話したくないことらしく、自分の部隊の人間に背をむけてソニアの顔の高さにかがんで声を潜める。
「ソニア殿。もしかしてそなたは……そなたこそ馬鹿なことを考えているのではなかろうな?」
「何が。ランスロットは相変わらず心配性だ」
「……心配されるようなことに心当たりがあるってことだろう?そなたはリーダーだということを忘れてはいけないぞ」
「……ランスロットのそういうとこ、嫌いだ。忘れてないのに、いつもそういうことを言う。そんなにあたしは駄目なことばかりをしているのか?」
「私が嫌われるだけなら別に構わない。そういう話ではない。まさか、そなたはデボネア将軍と……」
その言葉を聞いてちょっとソニアは眉根を寄せたけれど、観念したように肩をすくめた。
「駄目?」
「駄目だっ!どうしてそういう無茶をしたがるんだ、そなたは……許さないぞ、デボネア将軍と剣をあわせよう、なんて」
 その声は大きくて、ランスロットの部隊のメンバーも、ソニアの部隊のメンバーも角の手前でみな振り返った。ソニアは皆には見えない角度でランスロットを睨みつけるようにむくれてみせる。ランスロットは、なんでもない、といいたげにハイネ達に手を軽くふった。それをみて彼らが角をまがっていくのを確認してからソニアは口を開いた。
「何故駄目だ」
「危険すぎるだろうが。」
「でも、もしデボネア将軍が前衛に出ていたら嫌でも剣を合わせることになるんだから、一緒だろう」
「一緒じゃない。」
「どうしても駄目か」
「駄目だ。危険すぎる。ここでそなたに万が一のことがあったら」
「駄目なら、今から反乱軍のリーダーはやめる。ランスロット達にまかせる。」
「ソニア!」
 ランスロットは声を荒げた。
 そこまで大きな声でランスロットに怒られたのは初めてで、ソニアは彼女にしてはめずらしくびくっと体をふるわせた。
 そっとランスロットを見ると、今まで見たことがないほどランスロットの目は怒っている。
「……言うな。そういうことは。」
「……だって」
「だって、じゃない……そなたに命を預けている者達のことを考えろ。」
「いつだって考えている」
「嘘だ。考えていればそんなことは口からでないはずだ。」
 ソニアは黙ってランスロットをみる。
 ソニアの大きい瞳はまばたきを忘れたようにランスロットを睨みつけていた。が、ランスロットはランスロットで、この勝手なリーダーのわがままをこれ以上許しておくわけにはいかない。
 二人はかなり長い間お互いににらみ合いを続けていた。ソニアは見上げるように下からランスロットをみている。
反発する気持ちがその表情でわかるけれど、ここではもう引けやしない。
「無茶なことはしないと約束してくれ」
「そんな約束は出来ない」
「ソニア殿」
「……あたしは……デボネア将軍と、打ち合いたい」
「駄目だ」
「……危なくなったらすぐ撤退するから」
「それをすることで戦況が変わってしまう事態がおきないといいきれるか」
 う、とソニアは黙る。ランスロットの険しい表情を見て、それからうめくように言う。
「わからない」
「駄目だ。どうしても打ち合いたいんだったら捕虜にでもしてやってくれ」
「むちゃなことを言う」
「どっちが無茶なことを言っていると思っているんだ。自覚を持ってくれ!」
「おーーーい」
 二人が険悪になっているとついさっき飛び立ったカノープスがものすごいスピードで降りて来た。
「ミュルニーク方面は大丈夫だぜ。今また城壁方向からレイブンの部隊が出て来たのが見えた。そいつはエルランゲン方向にいったからトミーの部隊にまかせておけば大丈夫だろ。……何、お前ら何嫌なムードになってんの」
「鳥!飛んで!」
「えっ」
 ソニアは無理矢理カノープスの腕にぶらさがった。
「ソニア殿!」
 ランスロットが叫ぶ。
「ちょっと頭冷してくるから待ってろ、ランスロット!ものの数分だ!」
「……そうか」
「飛んで」
「……いーけどよ、お前人使い荒いぜ」


 カノープスは上空に飛んでちょっといった木にソニアを座らせて自分ははばたいてその側で戦況を見ていた。
 先ほど相当な数の部隊を潰したので、帝国側もそうそう簡単に部隊を派遣できないのか少し間隔があいている。
 そこで本当は攻め込みたかったのだが、城壁をどうするか、で困っていたというわけだ。が、もうどうするかを決めたのであとは陽動部隊の派遣だけだ。それはきっと今ごろランスロットが自分の部隊のホークマンに依頼しているころだろう。もう少しミュルニーク側に飛んでいってもらって合図をおくればわかるはずだ。
「どーしたんだよ、お前ら」
「……」
「ソニア?」
「……」
「おっ、おい!?」
 ぼろぼろ、とソニアが泣き出したのをみてカノープスは仰天する。
「ど、どうした」
「ランスロットなんて、嫌いだ!いつもいつもいつもいつもいつも……・」
「どーしたんだよ」
「いつだって、あたしに、立派なリーダーでいて欲しいと思ってる。まだ足りないんだ。きっと。たった一個わがままいったって、100個のことをあたしがランスロットの思っているような通りにしなきゃ、叶えてもらえないんだ」
「……何があったよ」
 カノープスはこれは大事だ、とばかりに飛ぶのをやめてソニアの側に近づいた。
 ソニアはぐずりながらカノープスに先ほどの顛末を話した。カノープスは彼にしてはとても根気強く聞き、そして最後にいった。
「そりゃあ、奴が正しいわな」
「……知ってる」
「じゃあ、何で泣いてるんだ。子供かよ」
「……嫌われるだけなら別に構わないっていってた……」
「はあ?何が」
「……わかんないけど、悲しくなって、ムキになってしまった。謝らないといけない」
「なんだ、思ったより冷静じゃないか」
 それでもソニアはちょっとしゃくりあげる。
「ごめ……。」
「あーーー、もお、仕方ねえよな。……なんかあったってみんなの前じゃあリーダー様だもんな」
「悔しい」
「何が」
「カノープスに弱みを握られた。」
「はいはい。そんな、泣きながら言うことじゃねえよ。……大丈夫か」
 ぽんぽん、とソニアの背中をたたいてやるカノープス。
「大丈夫になったら呼べよ。それまで、みないでおいてやる」
「恩に着る」
「そんなことだけ固いこといってんじゃねえよ」
 仕方ない、とばかりにカノープスはソニアの側を離れて空を飛んだ。
 ソニアは木の上で、一体どうして自分は泣いてしまったんだろう、と必死になって考えながらまだしゃくりあげていた。


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