城壁

モクジ

  3  

 ゼノビア家が滅びた日、乳母のバーニャは赤子だったトリスタン皇子を連れてカルロバツに逃げて来たという。
「あなたが反乱軍のリーダーですか」
 老婦人はぼろぼろの家の一室で彼らを待っていた。
 24年前には既に王宮仕えをしていた魔法使いウォーレンが本物だというから嘘ではないのだろう。
ソニアとランスロットは、自分の部隊をギルバルドに指示を出してもらうようにお願いをして、カノープスに抱えてカルバロツまで飛んで来た。
 ウォーレンはカルバロツに来てから、自分の部隊にいるヘルハウンド一体をナイトとクレリックにまかせて一人で乳母バーニャのもとにいた。
 老婦人は、今までのことをせつせつとソニア達に語り、そして問う。
 この反乱軍の行く末、帝国をうち滅ぼしたあとにソニア達は一体このゼノビアをどうするつもりなのか。
「統治できるのは、ゼノビア家以外には考えられません。……それとも、あなたがそれを成そうとするのですか。」
 それにはソニアの方が仰天して答える。
「まさか!そんなことが出来るわけがない。」
「さすが、ソニア殿です。身分をわきまえておいでですね。」
 その言葉にソニアがむっとしたことはそこにいる全員が気付く。
 カノープスはおもしろくなさそうに空あくびをした。それをウォーレンが「これこれ」と苦笑しながら視線をおくる。この老体も案外と物分かりがいい人間であるからカノープスが多少無礼な行為をしたからといって目くじらを立てるわけではない。逆にバーニャの方がきっ、とカノープスを見る。
「ゼノビアは、ゼノビア家が治めるのが筋だ。本来は。」
 ソニアがそう言うと、バーニャは満面の笑みでソニアをみる。
「それでは、これをさしあげましょう。これは栄光の鍵といって、ゼノビア王家の証になります。これをもって、トリスタン皇子をお救いください。皇子はアヴァロン島付近に身を隠しておいでのはずです。」
「わかった。あなたのご協力に感謝する。」
 本当は感謝されることはあっても、感謝することはあまりないのだがな、とソニアは思いながらそのアイテムを受け取った。


「んだよなあ、ムカつくっての。身分をわきまえておいでです、ときたもんだ。」
「ははは、本当のことだから仕方ないよ」
 カノープスに抱えられながらソニアは言った。一度ゼノビア砦に戻り、残処理の確認をしてからでなければミュルニークに戻れない。
気を利かせたギルバルドが、ミュルニークからガストンの部隊を呼んでグリフォンを更に二匹つれてきてもらっているはずだ。グリフォンがいくらかいれば、一度部隊編成をしなおしてカノープスも帰りは楽にグリフォンに乗せてもらえばいいだろう。
「よくブチ切れなかったな。ま、ムカついてたんだろうけど。人をバカにするのもほどほどにしやがれっての」
「いや、ああいうものなんだろう、王宮の人間とは」
 そういってソニアはランスロットに同意を求めた。
「……あまり肯定したくないがな。わたしもいささか腹がたってしまったが」
「ランスロットが?」
「ああ。……我々のリーダーを愚弄された気がする。」
 カノープスは、めずらしいこともあったもんだ、と口笛を吹いた。ソニアは意外そうにランスロットをみた。
が、そのソニアの口からはばかげた質問が飛び出した。
「ぐろう、ってなんだ?」
 それを聞いてカノープスは大声で笑う。
「……おめーは本当にバカだなあ」
「し、知らない言葉があったっていいじゃないか!」
「要するに、お前をバカにされたみたいで気分が悪いっていったんだよ。俺達の大事なリーダーに対して何いってるんだ、このババア、と思ってるってことだ」
「そこまでひどい感情はないけれど」
 ちょっと照れくさそうにランスロットは言った。ソニアはカノープスのその言葉を聞いてからランスロットをみて、にこ、と笑う。
「ありがとう、ランスロット。でも、大丈夫だよ」
「……ああ」
 それは無理矢理作った笑顔のような気がしたけれど、ランスロットはあえてそれ以上は何も言わなかった。
「んだよ!なんで俺には礼をいわねえんだよ」
「ん?じゃあ、ありがとう」
「てっめー!ここから落とすぞ!」
「あ、やだやだ。ごめん、カノープス。ありがとうありがとうありがとう!」
 それは本当に子供のやりとりじみていて、ランスロットは二人の様子を見てちょっとだけ笑ってしまった。ソニアは必死になってカノープスの体にしがみつく。カノープス達は背中に翼がある関係上、上半身は何も着ていない。その体にソニアがしがみつくさまはなんとなく見ていると気恥ずかしいものがあった。もちろん、それは亜人であるカノープス自身は何とも思わないことなのだろうが。
 今まで気にしたことがなかったけれど、ソニアはカノープスに抱えられているときは本当にぴったりとくっついている。まるで、父親になついている小さな女の子のようで、見ていて気恥ずかしさを感じる反面、その様子がなんだか可愛らしいとすらランスロットは思ってしまった。
「なんだ、ランスロット。何笑ってる。」
「いや。なんでもない」
「なんでもないってこたあねえだろ。これだから王宮の人間は意味深でムカツクんだよ!……なんてな。俺とソニアが仲良しだから妬いてるんだろ」
 にやにやとカノープスは言う。ランスロットは苦笑して、
「そういうことにしておいても構わないが。半分あっているからな。……仲良しなのだなあ、と思って」
 そう言われて逆にカノープスが目を丸くする。
「……だってよ、ソニア」
「だからいっただろう!カノープスとあたしは仲良しだって」
「いいのかよ、それで?」
「?どうしてだ?」
「……・」
 俺にはどう考えてもランスロットとソニアの方が仲良しだと思えるんだけど。
 カノープスはそう思いながら、いや、それとは多分違うな、と心の中で呟いた。
 仲良し、とか、好き、とか、そういう言葉は色々な意味がある。
 多分本当に自分とソニアは最近仲良しなのだろう。けれど、それと同じくらい違う意味でソニアとランスロットがお互いを意識して好きあっているような気はする。それは彼の動物的勘だ。
 が。
 とりあえずそれはカノープスがわざわざ口を挟むことではない。
 正直、意識して好きあっている、という「好き」だって、どういう感情のものなのかはわからないわけだし。


 ゼノビアの城壁にそって、ソニアはそっと歩いていた。砦側で、守っている内側の壁だ。かなり頑丈に出来ているのがわかる。
 砦付近はいくつもの小さな民家やら店やらが並んでいたけれど、どれもこれも24年前に焼き払われたり攻撃をうけて崩れたりしている姿のままで、外側のスラムとの様子は大差がなかった。その、死んだ町をぬけてソニアは城壁周りの様子を見ていた。
 砦にいた兵士達をみな捕獲してそれぞれの処遇を決めてやり、各部隊に命令をして周辺の町に通達を出した。
手痛いことを言われて戻って来た部隊もあった。
 帝国軍がいなくなったからといって、この先のゼノビアはどうなるというのだ、そこまで反乱軍は考えていないのだろう、と。
それは確かだ。
 少なくとも帝国側からの圧政がなくなり、税金回収もなくなったことは事実だけれど、このスラムでは何一つ変わらない。
かといって、乳母バーニャのように、この戦が終わった後のゼノビアの統治、などという話が必要なのではない。
 スラムの人々に必要なのは、明日、明後日の生活の糧、これから生活水準をあげていくための方策、そういうものだ。
 ソニアはウォーレンに相談をした。ウォーレンはミュルニークに今日は戻らないでもう少し周辺の町の様子を調べるために2部隊ほど派遣させてくれ、とソニアに言う。それはしなければいけないことのような気がした。今回出陣しなかったアイーダの部隊と、出陣したけれどさほど消耗がないトミーの部隊を自由に使って良いから、何かいい策を考えてくれ、とソニアはウォーレンに依頼する。
 正直なところ、ソニアは政なぞわからない。だから、まさか自分がゼノビアをこの先統治しようなんて思ったこともなくバーニャの言葉は意外中の意外といってさえよいくらいだったのだ。
「ソニア殿。どうした。」
 そういう時に声をかけてくれるのは決まってランスロットかカノープス、そしてギルバルドだ。
「もう一刻もしないでミュルニークに戻る。疲れているようならちょっとでも砦の奥で休むといい。」
「いや。疲れではないんだ。」
 そっと城壁を触って上を見上げるソニア。
「……これは、いらないものだったのかもしれない」
「え」
「城壁」
「何故」
「戦のときは確かに必要になるものだし。それはとっておいたほうがいいに決まっている。……戦のときには」
 そういってランスロットをみて、ソニアは苦笑する。
「人の心に壁があるように。この壁は、このゼノビアに住む人間と、それはない周辺の人間との間に、高い乗り越えられない、見えない壁となってしまうのではないのだろうか。」
 それは、バーニャの言葉とか、周辺のスラムの人間の言葉とか。
 そういったものがソニアの心にひっかかっているのだということだとすぐにランスロットは気付く。
「けれど、そなたが決めたことは間違っていないと思う。……地震をおこしてまで崩す必要は、確かになかった。結果としてはな。」
「うん。ただ……いつか、民衆が、この壁を崩したいと思うようにならないような……この壁は、逆に、民衆を守るための最後のよりどころとなって欲しいものだと、そう思う。あたしは、自分が辺境のちっぽけな村にいたから尚更そう思うのだろうけれど……。正直なところ、王族の素晴らしさ、とか、高貴な身分である人間との差異、とか……そういうものは生きていく上では何も知る必要がなかったんだ」
 別にランスロットを責めている言葉ではないけれど、なんとなくそういうニュアンスをランスロットは感じて、黙り込んだ。
「同じだと思っていなかった。でも、何が違うのかは知らなくても生きられた。……この壁は、それをすべて否定してしまうかもしれない。この壁の中で生きるものと、外側で生きる人間の命の重さが違うような、そんな無慈悲な主張をこの城壁はしてしまう。……そうでないように。そうならないように。あたしが祈るのは、トリスタン皇子に出会えて、そして、その人が人格者であることだけだ。それから、ランスロットやウォーレンが、皇子を正しく導いてあげられること。難しい政治のことはあたしにはわからないから、それはランスロット達にお願いするほかないんだ」
「ソニア殿」
「まあ、それはまだまだ先の話だけれど。頼む。ランスロット。あのときこの壁を壊しておけば良かった、とあたしが後悔しないようにしてくれ」
 ランスロットには言葉がない。
 確かにこの少女は政治に関することはとんと疎くて、まったくその才能は発揮されないのだろう。
 けれど、気持ちは。
 とても正しくて、まっすぐで、民衆に対して誠実であろうとしている。

 身分をわきまえておいでです。

 そういうものなのだろうか、国を治めるということは。正しく治めることが出来て、はじめて身分というものが確定するのではないだろうか。
 それは、王宮騎士であった自分が思ってはいけないことなのだ、とランスロットは軽く首を振った。
「そなたがそう思っていたことを、私だけは覚えておこう。誰が忘れても。」
「ありがとう、ランスロット。それだけで十分だ。」
「……ああ、返り血、まだ洗ってないのか。そこに井戸があるからさっさとおとすといい。そんな顔でいたら、人々が恐がって仕方ない」
「そうだな。あの乳母のところにいくときにおとそうと思ったんだけど。忘れてた」
そういってソニアは手袋をとった。
「ソニア!」
「ん?」
「な、なんで指先までそんな……血だらけに」
「ああ、これ……。デボネアの剣を弾き飛ばしたときに、多分、ソニックブレイド発動の衝撃じゃないかな、爪、全部割れてしまって。」
「痛まないのか」
「痛い。でも、大丈夫だ。」
「大丈夫じゃない!オーロラを呼んでくる、待っていなさい。」
「いい。やめてくれランスロット。」
 ソニアは毅然としてランスロットを引き止めた。
「あまり皆に知れたら、またヘンドリクセンが申し訳なさがる。あたしが一方的に悪いのに、彼が思い煩うのは申し訳ない。ほとぼりが冷めた頃にハイネにでもヒーリングしてもらうよ。どうせ、少しの間は戦を休めるだろうし。」
「駄目だ。……それは、違う意味で、そなたも壁を作ろうとしているのだろう」
「え」
「抱えてはいけない。それ以上。もっと、我々に甘えてくれ。ヘンドリクセンとてそんなに弱い男ではない。自分のために自分のリーダーが傷ついたからといって、戦であれば当然だろうし、その傷は逆に悪いことをしたそなたへの天罰みたいなものだ。変に意固地にならないで、手当てをうけなさい。変な気の回し方をしている暇があったら、もっと他にやるべきことがある。」
 ランスロットがいっていることの意味があまりわからないようにソニアはみつめる。
 それから少し恥かしそうに小さく頷いた。
「うん。そうする。……もう少しだけ、甘える。」
「オーロラを呼んでくる。」
「いい。自分でいくよ……今日はランスロットに負かされてばかりだ。」
「勝ち負けなのか」
「うん。あたしの道理とランスロットの道理は違うから。勝ち負けなんだ。」
「ありがたくないな……」
 本当にありがたくなさそうにランスロットは言った。出来ればそんな勝負をしなくてすむようになる方がありがたいわけで。
「あ、丁度いい。オーロラがいる。じゃあな、ランスロット」
 遠くにオーロラの姿をみつけてソニアは走り出す。それから途中でぴたっと振り返って笑った。
「でも、もうあたしはランスロットにかなり甘えていると思うぞ!違うか?」
「……困った人だ。……それは知っている。」
「そうか。ならいいんだ。……やっぱりランスロットはあたしのことをよく知っている。嬉しい」
「なら、もうちょっと無茶はやめてくれ」
「うん、善処する」
「逃げ口上だな」
 苦笑してランスロットがそういうと、ソニアはいたづらっぽく笑ってそれ以上反論しないで走って行った。
 やれやれ、とランスロットはいまし方ソニアが触れていた城壁にそっと手を伸ばす。
 とても高いゼノビアの城壁。
 もしも帝国の侵略がなければ、きっとランスロットはこの城壁の中に一生いる人間で、そしてソニアは一生外にいる人間だったのだろう。
 そもそもこの城壁は、こんなに高くはなかったけれど24年前にはもう存在していた。
 あまり高くなかったから、帝国の猛攻に耐えられずに落城することになってしまっていたのだが、それまでは確かに城壁は何も必要がないとすら思われていたような気がする。
 帝国軍のために、更にこの城壁は高く高く。
 まるで周りのスラムの状態を無視するかのように、牙城だけがより安全に。
「ソニアには、そんなことは出来やしないな」
 自分からデボネア将軍に切り付けにいくようなあの少女には、そんな真似は出来ないのだろう。
「あ。謝らないといかんな……」
 ソニアは何も言わなかったけれど、ランスロットはソニアをしかりつけるときに彼女の頬をうってしまった。
 あれはランスロット自身でも行き過ぎた行為だと反省をしている。
 女性に手を挙げてしまうなど……。
(いや、やめておこう)
 多分、ソニアに逆に叱られる。男性だ、女性だ、ということを口にするのは、女性をリーダーとして祭り上げている彼らがしてはいけないことだ。
「おい!何してんだ、ランスロット。そろそろ処理も済みそうだから、帰り支度するぞ!」
 雄々しい羽音が聞こえて、カノープスが叫ぶのが見えた。
「ああ、今いく!」
「まさか、またソニアを叱ってたんじゃねえだろうなあ?いいけど、あいつ今日えらく泣いてたんだぜ」
「何?」
 カノープスは、あ、言っちゃった、という顔をしてちょっとバツが悪い様子に瞬時にしてなった。
 デボネア将軍を倒したあとにランスロットが怒っているときには、確かに少しなきそうな顔だったけれど、結局ソニアは涙をこぼしやしなかった。潤んでいた瞳は、怒られたから、とか悲しい、とか、そういう感情ではなくて、自分を止められなかった自分への不甲斐なさだということはランスロットには十分理解できていた。それだけのことではなかったのだろうか。
 しかし、あの後はすぐバーニャのもとにいって……。
「……頭を冷しにいってたときか。」
「ま、まあそれはおいといて。……ともかく、お前、あいつ叱るのは構わないけど、リーダーらしくなさがあいつのカリスマなんだから、もうちょっと加減しろよなあ。そこいらはわかっているのかよ」
「……わかっているつもりだ。」
 それは重々知っている。少なくとも、今の反乱軍を率いるにはソニアのあの、勝手気侭なことをしてしまうくせに人を引き付ける、不思議な吸引力が必要だ。それは手に入れようと思って手に入れられる能力ではない。
「ならいっけど。俺はあいつのああいうとこ、好きだぞ。お前が叱りつけちゃうような所が。あんまりあいつの良さを殺すことばかり言うな。つまんないリーダーは、王族の高貴なカタガタになってもらえばいいだけのことだ。」
「カノープス。」
「でも、そういう人間には、俺みたいな人間はついていかねえよ。多分な。そんなコワイ顔するなよ。お前だってあいつのこと好きなくせに」
「それはそうだ。でなければついて来ているはずがなかろう」
「うっわ、固いこというね。ま、そういうとこも嫌いじゃあないけど」
 けたけたとカノープスは笑って飛び去ってしまった。
 後に残されたランスロットは憮然とした表情でため息をつく。
「……泣かせてしまっていたのか」
 どのことで泣いたのだろう。あまり強くいいすぎたからだろうか?それとも、子供が癇癪を起こして泣いてしまったようなことだったのだろうか?

……あたしに、嫌われてもいい、なんてことを言うな。それは、とても不快だ

 何か一瞬ソニアのその言葉が頭をかすめたけれど、明確な答えとしてランスロットには把握できなかった。
「ミュルニークに戻ったら、ゆっくり寝よう」
 疲れた頭で考えても、間違えた答えしか引き出せない。ランスロットは城壁を離れて、砦の方へ歩きだした。
 死んでいるような町並み。
 ここが王都ゼノビアかと、今ですら信じられない。ここを再建できるのか、正直いうとランスロットも不安である。それでも、今はソニアがいった通り、それをするのはソニアではない。それと同じように、今はウォーレンにそれ以外のことはまかせて、自分もソニアのために力をつくすことが今一番やらなければいけないことなのだろう。
 砦に近づいていくと遠目でも、オーロラにソニアが手当てしてもらっている姿をみることが出来た。そのとなりには心配そうにヘンドリクセンとビクターが覗き込んでいる。それがなんだか必要以上に家族から心配されている末っ子のようにランスロットの目には映った。
「ふふ、相変わらずみんなに心配されているな。不思議な人だ」
 ふと後ろを振り返ると城壁がそびえたっている。ソニアであれば、こんな壁は何もなかったことに出来るような魅力と誠実さをもっているのにな、なんてことを考えて、それは買いかぶり過ぎだ、と自嘲気味にランスロットは笑った。
「ランスロット!そろそろ出発するぞ!」
「わかった!」
 遠くから笑顔でソニアは治療をうけていないもう片方の手を振って叫ぶ。
 それを慌ててビクターとオーロラにたしなめられておとなしくなっている姿が見えた。なんだかそれすら、どれだけ皆がソニアを好きなのかがわかる光景にも思える。
 手綱を握りに同じ部隊になるのも、悪くないかもしれないな、とそれを見てランスロットはひとりごちた。



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