White Traces -1-

モドル
 それからほどなくして、エルシリアはそっと宴を抜けだした。トリスタンに教えてもらった部屋は、確かに普通の人間には発見しづらい通路の奥まった場所の部屋、そこから更に続いている部屋だった。
 手前の大部屋からその部屋への扉を見つけるのに少し苦労をしたが、エルシリアはようやく「一人でゆっくり休める」場所に辿り着くことが出来た。
(……きっと、他の通路に繋がっていて、別経路でここに来られるんでしょうね)
 そんなことを思いながら小部屋の扉を開けると、室内は壁の両側の奥まった場所にある燭台によって照らされていた。入り口から五、六歩進んだ位置にカウチが置いてある。いかにもそこで身体を休めろと言うかのように。
(窓はないわね。だから、明かりをつけても、今入ってきた部屋以外には漏れない)
 一瞬でエルシリアはそれに気付き、それから、カウチよりさらに奥に潜んでいた人影に気付く。それは良く知っている人物だったし、きっとそこにいるだろうと予測はしていた。そして、その後ろに控えるランスロットのことも。
 既にランスロットの手が、腰に下げた剣の柄に触れていることにエルシリアは気付いた。そして、その手は決して脱力していない。惰性で触れているのではなく、意思を持って、その剣を鞘から抜くためにその場に置いている。ひと目でそれがわかるほど、彼のその様子は過去何度も戦場で見ていた形だった。
「トリスタン皇子ではありませんか……一体ここで何を?」
 それでも、エルシリアは彼らを安心させるかのように、無防備を装って声をかける。
 その先に彼らが自分に何を求めるのかを知っていても。いや、何が自分から略奪されるのかを知っていても。
 彼らの目当てはエルシリアの命。だからといって、二人揃って宴から姿を消さなくても良いのに、とエルシリアは泣き笑いの表情になる。わかっている。トリスタンはきっと自分がやると、自分が手を染めると言うだろうし、ランスロットはそれを止めようとする。そういう人々だった。だから、彼女は彼らをどこかしら鬱陶しいと思いつつ、それでも嫌いではなかった。いや、むしろ好きだった。
 トリスタンがもっと傲慢な人物で、ここに足を運ぶリスクを回避し、暗殺を臣下に命じるだけの主君だったら。そうしたらエルシリアだってこんな手に乗らなかった。
「貴殿に恨みはないが、生きていられては困るのだ」
 気付きたくなかったのに。エルシリアは眉根を潜めた。きっと、トリスタンはそれを「一体何を言っているのか」と彼女が訝しんだ表情だと思ったに違いない。けれども、そうではないのだ。それは、トリスタンの声の震えに気付いたが故の動揺だ。
 それは何を思っての震えなの。わたしを殺すことそのものを嘆いての震えなの。それとも罪を負うことへの恐怖心なの。一瞬で湧き上がる様々な思い。それが何なのかと尋ねたところで、トリスタン本人も明確な答えは持たないに違いない。それでも、エルシリアは一瞬問いかけようと軽く唇を開いた。
が、言葉を発する前にトリスタンの後ろにいたランスロットが、すらりと剣を抜いて一歩前に出る。
「勇者殿、ご覚悟を!」
 自分が剣士だったら、ここで戦えたのだろうか。至近距離でランスロットの剣を避けられるとは思っていない。それでも、彼女は一歩、斜め後ろ、壁に寄り添うように下がった。本来、室内で近距離戦を持ち込まれて壁際に自分から行くなんて、自殺行為だ。けれど、彼女にはそうすることしか出来なかった。他の方向に動いたからといってランスロットの剣は避けられないし、魔法の発動も間に合わない。
 動脈を一発で切り裂けば彼の勝利は確定するし、いくら彼女の暗黒魔法が彼らの属性に反するもので効きやすいとしても、それはたった一回の詠唱で命を奪えるほどの強さではない。
 タロットカードを使う暇もない、その生死の境、彼女は賭けた。壁側に寄ることで、あまり広くない入り口からランスロットまでは空間がまっすぐ直線に開く。
 薄暗い室内。彼女は入り口のドアを閉めていなかった。トリスタンとランスロットはドアを閉めるには彼女を倒すか押しのけるしか方法はなく、開いたままで彼女を殺すことを選んだ。
 通路から差し込んでいた光は、室内のそれよりも僅かに明るかったのだが、突然その明かりが遮られ室内がふっと暗くなったように感じる。剣を振り下ろそうとしたランスロットが、それに気づかぬほど凡庸で愚鈍な人間であれば、きっと彼の任務は一瞬で終わったはずだった。
 しかし、彼はそうではなかった。何かが起きた。そこで事態に対応しようと自然に体を止めて状況判断に五感を動かしてしまったのは、無意識の、騎士としての彼の鍛錬の成果だ。
「まさか」
 誰かが来たのか。と思ったら、次は突然の発光。開け放った入り口から、凄まじい速度で白い光が床の上を滑っていく。エルシリアの足すれすれの軌道で光はランスロットに向かっていった。
 それは、ソニックブームの光だ。
「ぐっ……!」
 狭い室内、こうなっては分が悪いのはお互い様だ。ランスロットはその光を喰らえば相当な怪我を負うことを瞬時に理解したが、主君の命を果たすことを優先しようとした。彼のその判断はまったく正しい。
 けれど、彼は優れた騎士ゆえに、その判断を己に下す前にまたも、体はソニックブームを避けようと一瞬動き、それから自分が避けたらトリスタンに当たるのではないかと思い、ではやはり自分は避けずに、そして勢いに負けぬよう痛みに負けぬよう、エルシリアに剣を振り下ろさなければいけない。
 それらのことをわずかな一瞬で判断したものの、あまりに情報量が多すぎた。彼は、彼が思うほど早く動くことができず、ソニックブームの直撃を受けてもエルシリアを切れるほど、耐える態勢が整わなかった。
 それに。
 たとえエルシリアを切ったとしても、このソニックブームを放った人間は。
(これは、ソニックブームだ。ソニックブレイドではない。光が違う……だから、デボネア将軍ではない)
 反乱軍でそれを放つことが出来る者は、二人いるサムライマスターと、トリスタンと、それから。
(天空の三騎士……!)
 ソニックブームは放った反動が己自身に返る技だ。けれども、天空の三騎士は間違いなく体に痛みを感じているはずなのに、けろりとして次の一手を打とうとしてくる。
 その可能性もランスロットは即座に気づき、またも判断が鈍った。
 まるでそれを見透かしたかのように、壁にそっと体を寄せるエルシリアとランスロットの間に、大きな影が予想外の俊敏さで立ちはだかる。
「暗殺か。感心せぬな」
「フォーゲル様、なぜここに……」
「お前たちがエルシリアを殺そうとするならば、何故も何も答える義理はない」
 そう言ってフォーゲルは剣を構えたままランスロットを見据える。
「く……」
「ランスロット、良い。下がれ」
「しかし」
「二対二だけれど、分が悪すぎる。ことを公にしたくないこちらと、公にしてもいいそちらでは」
 トリスタンのその言葉を受け入れ、ランスロットは静かに剣をおろした。
 しかし、彼は主君を護らなければいけない身の上、戦う意志はもうないと伝えつつも、トリスタンを護るようにじりじりと下がり、決してその視線をフォーゲルから離さない。
「フォーゲル様」
 エルシリアは、そっとフォーゲルの背に体を寄せた。決してフォーゲルは振り返らず、エルシリアに声もかけずに続けた。
「ゼノビアの禍根になると思ったか、トリスタンよ」
「はい。勝手な言い分だとは理解しております。けれど、エルシリア殿は、良い意味でも悪い意味でも人を惹きつける存在。そして、邪神からこの大陸を救ったのが彼女であることは、既に民衆も知っていること。人々は帝国の侵略と圧政で、自分達を護る力が必要だということも身に染みている」
「皇子の言い分は尤もだ。そして、民衆に武力で応えるために、まずは武力で最大の味方を排除するということだな」
「最大の味方であり、最大の敵に成り得る者を。彼女自身を敵になる存在だと思っているわけではありません。僕達はエルシリアを信頼している。エルシリア本人のことは、それはもう」
「やめた方が良い。ゼノビアの皇子よ。我らは確かにエルシリアに命を救われたゆえここにこうしているが、本来天の父から下界への干渉の許可が下りるのは、もっと大掛かりな災厄が降りかかった時」
 フォーゲルはそこで言葉を止めた。勘が良いトリスタンは察して、眉間に皺を寄せる。
「破壊神ディアブロの存在が、その災厄ではないとおっしゃるのですか。まさか、今後エルシリアが……」
「可能性はなくはない。ないことが望ましい。が、それは確約出来るものではない。その時が来たら失うものは己の国だけではなく、すべての世界になるやもしれぬぞ」
 その場がしん、と静まり返った。トリスタンもランスロットも険しい表情を見せたまま、動かない。
 宴の喧騒からは遠く離れているため、世界はものすごく静かなのだとエルシリアは思った。
 実のところ、フォーゲルの言葉に一番衝撃を受けていたのはエルシリアだった。彼が言っていることは、世界が勝手に己に課した役割がまだ残っているということだ。それは、何一つ嬉しくない。
 けれども。
「トリスタン皇子。今日のこの計画を、ウォーレンは勿論知っているんですよね?」
「……ああ」
「ならば、わたしはもうゼノビアには本当に必要がないのでしょう。ウォーレンの星見で選ばれたわたしを、ウォーレンが切ることを選んだのならば。だから、次に何かがあった時にゼノビアを救うのはわたしではありません」
「エルシリア」
 フォーゲルの尖った声。それは、彼女を生きさせるために使った手駒を彼女自身が否定したことへの叱責の感情がこもっている。
「それに、わたしはあまり自分の命に頓着がない方なので」
 エルシリアのその表現に、トリスタンは泣き笑いを返した。
「知っているよ。でも、僕が君を殺すことを選んだのは、君がそうだからではない」
 それへ声を潜めて「殿下」とたしなめるように呼びかけるランスロット。
 言葉にしてはいけない。殺そうとした事実を認めてはいけない。少なくともトリスタンは。彼はそう思っていたに違いない。
「それはわたしも存じていますよ。わたしは自分の命ばかりか他人の命にもあまり興味はないので、万が一フォーゲル様がおっしゃることが本当に起きても、その戦いに身を投じるかどうか、それこそ確約は出来ません」
「エルシリア」二度目のフォーゲルの声音は更に険しい。トリスタンは静かにエルシリアを見つめて告げた。
「君は、自分の命が果てることよりも、やり遂げようと思うことをやり遂げられない方が嫌なのだろう。人というものは、本当はそれでは駄目だ。それは、何かに憑りつかれた芸術家だけが許されるもの。だが、君がそうであるがゆえに、反乱軍は帝国を打ち倒すことが出来たのだと思う」
「褒められている気がしませんけれど」
「あまり褒めたくない。君は、運よく生き延びたけれど、それは本当に……」
 首を横に振るトリスタン。恨み言を言おうとして彼は堪える。彼は、自分が反乱軍から離脱させられた理由を嫌と言うほどわかっていたし、そして、その後の反乱軍が相当に手厳しい環境に晒されたことも知っているのだ。そして、本当はそこに自分がいれば、そこまでエルシリアがすべての矢表に立たずに済んだことも。
「君がやり遂げたことは、死んでも良いと思っている人間でなければやり遂げられなかった。僕のように、どんなに無様でも生きなければいけない立場の人間では、成し得なかったのだろうと思う。人は、死んでも良い覚悟で物事を成し得た人間を、死んでも良いと思っていたことを知らずにただただ成果に誤魔化され、勘違いをして、また神輿にあげようとする。君はきっと次の神輿には乗らないだろうが、君を乗せようと思う人間が動くことそのものが、ゼノビアの不穏分子になる」
「ご尤もなお話」
 エルシリアは心を動かされた風もなく、軽く言葉を返した。彼女よりも余程フォーゲルの方がトリスタンに対して投げつけたい言葉が喉奥にせりあがっていたようで
「だから許せと言うか、ゼノビアの皇子よ」
「いいえ、まさか。許されたいなぞ、これっぽっちも。それは、反乱軍を勝利に導くために行った荒療治を彼女が許されたいと思っていないのと同じ。僕だけが許されたいと思うなぞ、そんな甘いことは」
「もうそんな話は結構です」
 まるで、懺悔をして楽にさせる気はない、とばかりにエルシリアはトリスタンの言葉を止めた。
「あなた達はわたしを殺そうとして、そして、わたしの存在がゼノビアにとって危険分子であると、あるいは、危険分子の芽を生やす種になると思っているんでしょう。あなた方が何を思っていようが、それ以上のことは何もない。それ以外のことを語るのは、ただのエゴでしょう?」
 自分に手をかけようとした人間の釈明を受けるつもりはない、とばかりにエルシリアは突っぱねる。そんな彼女にトリスタンは苦笑いを見せた。聡い彼は、エルシリアが暗に「命を奪おうとされたことをなんとも思っていない」と告げていることに気付いていた。
「潔い人だ、君は……ここで君に刃を向けた僕が言える義理ではないが、もう少し君は」
 そこまで口にして「いや、言うまい」と彼はまたも首を横に軽く振った。いささか芝居めいたしぐさではあったけれど、それはまったくの無意識での動きで、彼の本心を十分に表すものだ。
「エルシリアは、天空都市で預かろう」
 突如、フォーゲルはきっぱりとそう言った。トリスタンとランスロットのみならず、エルシリアも突然のことに動揺を隠せず、「えぇ?」と間抜けな声をあげてしまう。
「預かるって、わたしは彼らのモノではないんですけど」
 不愉快だ、とわずかに唇を尖らせてエルシリアはフォーゲルの腕を軽くひっぱる。
 だが、フォーゲルは冷静に言葉を返した。
「君は地上の者だ。勇者として選ばれ、地上でブリュンヒルドを手にする資格を持つ者。ブリュンヒルドを君達地上の者が欲したように、君の力がまた欲される未来があるかもしれない。もしも、その時が来ればそれは、トリスタン皇子が思い描くような、ゼノビアがどうのといった一国の話ではないだろう。ディアブロを倒したように」
「まだわたしにはやることがあると?」
「それはわからない。が、あったとすれば、正しき時に君はまた導かれる。概して勇者というものはそういうものだ。なければなかったで」
「……シグルドに骨を埋めろとおっしゃる?」「それは君次第だ」
「そんな言葉が欲しいわけじゃありません」
 トリスタンとランスロットが見ている前で、エルシリアはとんでもないことを口にした。
「愛の言葉はくださらないのですか」
 彼女の言葉にトリスタンとランスロットは驚いた。フォーゲルが助けに来たからといって、二人がそういう関係であるとはこれっぽっちも思っていなかったからだ。
 事実、エルシリアとフォーゲルは別段心が通じあった恋仲というわけでもなく、ただただお互いがお互いのことを気にしていると理解しあってる間柄だった。最後の一線をどちらも超えぬまま旅が終わり、今に至るわけだ。
 フォーゲルは、未だ視線はトリスタンとランスロットに向け、すぐにでも剣をふるえる態勢を崩さぬままきっぱりと答える。
「これは、下界のいざこざだ。それを見逃せなかった」
「……」
 たったそれだけの言葉を、フォーゲルはエルシリアが言うところの「愛の言葉」として返した。自分が彼女に対して抱いている感情を、彼女自身に「愛」などと言われてもフォーゲルは否定をしなかったし、動揺もしなかった。フォーゲルの後ろで口ごもって静かになるエルシリア。
「今晩中にここを出られるか、エルシリア」
「はい」
「そういうことだ。さらばだ、ゼノビアの皇子とその臣下よ。スルストとフェンリルはしばし地上の時を楽しむだろうが、俺は戻る」
「……エルシリアがフォーゲル様の元へ行ったことは、公にしても良いのでしょうか」
「そうするしかあるまい。嫌でもそのうちスルストとフェンリルにはばれるだろうし、天界も気付くだろう。民衆にも、エルシリアは手が届かぬところに行ったと伝えれば、彼女を傀儡にしてどうこうしようと画策する輩も出まい」
 トリスタンとランスロットはお互い目くばせをしあった。そもそも彼らはエリシリア暗殺も、あまり乗り気ではなかったし、こんなあからさまな形で天空の三騎士と敵対をする気はさらさらなかった。
 彼らの返事を聞かずに、エリシリアはフォーゲルの背から顔を覗かせて、彼らの意向を断定する。
「決まりね。餞別は置いていくわ。感謝して頂戴、トリスタン」
 エルシリアはトリスタンに対する言葉を改めていた。それは、もう彼女はトリスタンを敬って甲斐甲斐しく持ちあげる立場ではないと、ゼノビアの、このゼテギネア大陸の人間であることを捨てるという表明だ。
「わたしが手放さないと公言した剣をこの国に」
「……ブリュンヒルドのことかい」
「ええ、地上のものに与えられた天界の力のシンボルよ。それを手にする者が国の上に立つとなれば、人心は容易く掌中に出来るでしょう」
「しかし、あの剣の持ち主は君だ」
「その持ち主があげるって言ってるんだからいいでしょ?わたしは間接的とはいえフェンリル様から与えられて、ブリュンヒルドの主らしいことをこれでもしてきたつもりだわ。次はあなたの番」
 エルシリアは鮮やかに微笑んだ。トリスタンは「君を殺そうとした僕達に情けをかけようと?」と力なく尋ねる。
「かけるのは情けじゃないわ。呪いよ」
 そう言いながら、エルシリアは自分を守ろうと前に出てくれたフォーゲルの、剣を持つ腕に細腕を絡めた。それで、ようやくフォーゲルは手を下ろし、警戒を解いた。
「真の持ち主ではないものが手にし続けることが出来るのか、あなた達が試そうとしてくれるんでしょう? ラシュディがキャターズアイを手にしたのと同じように」
 その問いに声を荒らげて答えるのはランスロットだ。
「そういうことではない」
「そういうことよ。わたしを殺した後、ブリュンヒルドをどうするつもりだったの? フェンリル様に、エルシリアを殺したから返します、なんて言おうと思っていたのかしら、うふふ」
 彼女はいささか酷薄な笑みを見せた。その笑みは、いつも彼女の意思をうっすらと隠すヴェールになっている。時に、それを誰かが覗こうとしても、その先にある「彼女の真意」と人に思われそうなものは、彼女が用意したミステイクを誘うフェイクだ。
 もっと深い場所に彼女の心はある。まるで深海にいるような誰の手も届かぬ場所に彼女の心はあり、それすら気づかせぬようにとその笑みを纏っているのだとフォーゲルは思う。
「君のその笑みで煙に巻かれ続けた」
とランスロット。
「あはっ」
 不意を突かれて、エルシリアは素の笑い声を洩らす。
「が、最後まで君が微笑み続けたことには感服する」
「ありがとう、ランスロット。その言葉を餞別にいただいていくわ」
「君に剣を向けたことをわたしは後悔しない。そして、君と共に戦ったことも。綺麗ごとと思われるだろうが」
 エルシリアはその言葉に何も返さなかったが、ランスロットも返事は要求していなかった。
 彼女は最後にもう一度艶やかな笑顔で「では、ごきげんよう」と彼らに背を向け、部屋から出て行った。



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