運命の息吹-1-

「オウガバトルと呼ばれた戦いで・・・人間は神の尽力で大地の覇者になった。けれども、人はオウガ達がいなくなると・・・自分達の争いを引き起こした」
ソニアはそうつぶやいた。彼女がそういう話を自分から口にするのを初めて聞いてカノープスは驚く。
「どーした、熱でもあるのか」
「・・・聖なる父神は、人間の愚かさを嘆いて人間を見捨てた。この天界にいる人々は、我々をどう思っているのだろうな」
「さあな。少なくとももうここに来ちまったわけだし、なんだか天界つっても普通っぽいところだしな。ともかく様子を見ようぜ。想像してたってきりがねえもんな。もーそろそろギルバルドも戻ってくるだろう」
ギルバルドがワイバーンを使って斥候役をかってでてくれた。いつもならばカノープスがいってくれるところだけれどまだ未知の世界であるここで彼を一人にするわけはいかない。ワイバーンにギルバルドとアイーシャ、それからフレイアのテスの3人が乗り込んでソニア達の所から離れてもう半刻以上にもなる。
辺りはまるで普通の草原とかわりがないように思えるけれど、ここは天界と呼ばれるところで、そして紛れもなく雲の上にういている浮島なのだ。
聖剣ブリュンヒルドの導きによってここに来た彼らは、何も違いがないことに逆に何もかも戸惑ってしまっている。
カノープスとちょっとしたやりとりをしていると、噂をすればなんとやらで遠くの空にギルバルド達を乗せて飛ぶコカハーンの姿が見えてきた。

天界に来たのはソニアの部隊・ギルバルト・アイーシャの部隊の3部隊だった。
全員が草原に座り込んで、ギルバルドとソニアを中心として集まってくる。
「流刑地・・・ここが・・・」
ギルバルドが教えてくれた内容はあまりにも盛りだくさんで、ソニア達はうならずにはいられなかった。
まずわかったのは、下界となんら変わりなくここでは日々の生活が営まれているらしく、町と呼ばれる集団生活のコロニーがまったく自分達が考えている生活と同じであることだった。それには一同がほっとした様子が見える。
それからギルバルドはかいつまんで話してくれた。
この地はオルガナと呼ばれ、ここには一人の罪人が幽閉されているのだということ。
それがフェンリルという女性で、事実上この地を治めている、天空の三騎士のうちの一人であること。
「ソニア。そのフェンリルが・・・聖剣ブリュンヒルドを、地上の人間達に与えてくれたその人なのだというもともとは彼女の剣だったらしいがな」
「・・・この剣を」
「オウガバトルが終わっても争っている人間を助けたことを聖なる父は悔やんでいた。天界に住む他の神々や戦士に下界に関わるなと命じたが、フェンリルは1つのチャンスとしてブリュンヒルドを人間に与えた。それが聖なる父の怒りに触れて、この地に幽閉されることになったのだという」
「そのブリュンヒルドは、神と人を結ぶ・・・最後の希望だといっても過言ではありませんわ」
アイーシャは静かに言った。
いつの日か、下界に心正しき、真の平和をもたらすことが出来る者が現れるまで。
それが現れない限りはフェンリルがしたことは意味を成さず、彼女は罪を背負い、このオルガナに永遠に幽閉され続けるのだという。
そして、ブリュンヒルドは心正しき者を天界に誘う・・・。
「・・・これが、どういうことなのかわかるか?」
そう言ったギルバルドは、いつものソニアには甘い、飄々とした大らかなその人とは違う表情を見せた。
ソニアは少し考えて、首を横にふる。
「ごめん、ギルが言ってることはわからない・・・わかるけど、わからない」
「・・・それは」
ソニアの代わりに口を開いたのはランスロットだった。一同の視線が集まる。
「ソニア殿がここに来たことで・・・その、三騎士のひとり、フェンリル殿の罪は償われるということか?」
「・・・そういうことになる」
「む・・・」
ソニアは小さくうめいて目を細めた。先ほどの「わかるけど、わからない」という言葉はどういう意味なのだろう、とランスロットはソニアを見るけれど、彼女は彼女でカノープスを見て肩をすくめてみせた。
「んだよ?」
「カノープスはわかった?」
「当たり前だ。なんでお前、わかんないわけ?」
「・・・んー・・・わかんない、というんじゃなくて。ピンと来ないんだ。腹はくくったから、聖剣に選ばれたとか選ばれないとか、勇者とかそうじゃないとかそういうのは、もう、その、いいんだ」
少し大人しくソニアは言った。
「よくわからない。何をもってして罪だといって、彼女自身が何もしていないのにあたしがくることで償われる、というのも。それは罪ではなかった、ということになるのなら、聖なる父は、逆に何を彼女に償ってくれるんだろう」
「・・・まあな」
カノープスは真似したわけではなかったけれど、肩をすくめて答えた。ソニアの言葉にぴくりと眉を動かしたアイーシャは、何かを言おうとしてほんのちょっと身を乗り出した。が、その様子には気づかないでソニアは続ける。
「でも、今あたし達にとって必要な話は、彼女の罪がどうとか聖なる父がどうとかじゃなくて・・・魔導師ラシュディが何を企んで何をここでしているのかってことだ。・・・ギル、そっちの話は?」
「うむ。どうやら魔導師ラシュディは天空の三騎士を味方につけようとしているようだな」
「味方に?どういうことだ?」
「正確にいうと・・・帝国軍がここに現れて以来、フェンリルの様子がおかしいという話で」
「ん?罪人の様子まで話題になるのか?」
「ソニア、さっきも言ったと思うが」
苦笑してギルバルドは言った。
「フェンリル殿は罪人だけれどもこの地を治めているのだ」
「あ。そか。じゃあ・・・みんな知っていてもおかしくないな」
「うむ。で、どうも味方に、というより・・・操られているのではないかな、と話を聞くと思われるのだが。ラシュディらしき人物がフェンリルのところへ向かったという話を聞いた」
「・・・ってことは、どっちにせよ・・・ま、フェンリルに会わなきゃわからないってことだね・・・あ・・・」
そういった瞬間ソニアはびくっと体を振るわせた。
「ソニア殿?」
何が起きたのか、とみなが慌ててソニアを見る。
それへソニアは苦笑して、ああ、大丈夫、と左手を軽くあげた。右手はそっと腰につけたブリュンヒルドの柄を掴む。
「ああ、大丈夫、お前の持ち主に合わせてあげないとな・・・」
小声でつぶやく声を、ランスロットだけは聞こえていた。

フェンリル以外の残り二人の騎士に関しての情報が手にはいった。
それは次のような話だった。
「西のはずれにはムスペルムへ向かうカオスゲートがある。ムスペルムには赤炎のスルストがいる。」
「シグルドのフォーゲルの元へ向かった騎士団の帰りが遅すぎる。まさかシグルドも帝国軍の手に落ちたのでは。」 
どうやらギルバルドが言っていた「三騎士を味方につける」または「三騎士の力を抑えておく」ということのためにラシュディが動いているのならば、ムスペルム、フォーゲル、という二人の騎士のもとにもいかなければいけないのだろうな、とソニアは思う。とはいえ、実はおいてきてしまったウォーレン達のことだって心配であったから、フェンリルと会ってからすぐに、簡単にムスペルムへのカオスゲートへ向かうつもりもない。
彼らはもう少しここオルガナで情報収集をしようと部隊ごとで別れて移動していた。合流の約束時刻にはまだ間がある。
ラシュディのこと、フェンリルのこと、そして更にはブリュンヒルドのこと、オウガバトルのこと、など何にしたって彼らに必要である情報は足で探すしかないのだ。
ソニアたちはランスロットを含めたままの部隊編成で小さな教会に来ていた。今の所ここが天界だからどうの、という不自由なことはなく、まったく下界と変わらずに動ける。
ただ、あまり下界の人間に対してここの住民がよく思っていないことはわかったし、争いごとを好まないということだけは彼らが動く上で念頭においておく必要があるらしい、とお互いに言い聞かせた。
「む・・・」
教会で話を聞いてから外に出たとき、ソニアはまた小さくうなってブリュンヒルドの柄を握る。
「どうした?ソニア殿」
「いや。・・・ブリュンヒルドがね。ここに来てからなんか・・・震えるんだ」
「震える?」
調度あとから出て来たランスロットが立ち止まったソニアに声をかけた。
「震えるっていうか・・・きっと、フェンリルのもとに戻りたいのだろうな・・・あたしを選んだのだって、フェンリルのもとに戻りたいからなんだろう、きっと。あたしでは役不足なんだな」
少しだけ寂しそうな目をするソニアをみてランスロットは小さく驚く。ここで言う役不足、という言葉の意味は明らかに彼女が自分を卑下している内容だ。あまりそういうことは口にするな、と以前からランスロットはソニアにうるさかったけれど、ここではそれを言ってはいけないような気がする。少しだけ間をあけて彼は子供に教え諭すような口調で言った。
「・・・だが、その剣は地上の人間に与えられたものだ。既にフェンリル殿のものではない。そして、その剣がそなたを選んだ。・・・いい事なのか悪いことなのかはわからないけれど」
「ああ、そうだ。いいことなのかどうかなんてわからない」
後から教会から出てきたテスとオリビアが、二人がまた何か話をしているようだ、と気づいてなんとなく遠慮がちに離れたのを二人は気づかない。
別段それは、「あの二人は好きあっているし・・・」云々という下世話な勘繰りで妙な気を回しているわけでもない。
彼女達からすれば単純に「あのお二人のお話はわたしたちが聞いてよいのか判断できないわ」というものなのだけれど・・・。
「普通の剣は、持ち主を選べない。どんなにいい剣でも、持ち主に愛されないのは可哀相だ。ましてや、その剣は持ち主を自分から・・・そなたを選んだというのに」
「・・・」
ソニアはランスロットを見た。彼は、ソニアが問題をおこさないでいるときのように穏やかで落ち着いた声音だった。
「どんなにいい剣でも、持ち主に愛されないのは、可哀相、か」
「そうは思わないのか」
「・・・ランスロットは、それ、スキか?」
ソニアはランスロットが腰に挿しているカラドボルグを指差した。本来ならば、パラディンに昇格したランスロットは神聖魔法を使えるし、プリーストもいるソニアの部隊に所属しているからわざわざ数少ない聖なる剣を彼がもっていなくてもよいはずだった。
以前のランスロットならば「これはもう私以外の者に使ってもらう方がいいのだろう」と自分からソニアに言い出したっておかしくない。実は、そんなことをソニアはちょっと前から考えていた。
「手に、馴染んだと思う。柄の太さが少し細いかとも思っていたのだが、慣れたらそうでもなくなって」
「好きか、って聞いたのに」
ちょっとだけソニアは拗ねたように言った。そうやって彼女が可愛らしいそぶりをみせるのはひさしぶりのような気がしてランスロットは微笑して答えた。
「ああ。この剣は好きだ」
「・・・そうか」
ソニアは嬉しそうにランスロットに笑顔を見せる。
「その言葉が、自分のことのように嬉しい。・・・きっと、あたしがこの剣を好きでなければ、フェンリルも悲しいのだろう」
そういって、それから付け加えた。
「ランスロットはもしかして勘違いをしているぞ」
「何だろう?」
「あたしは、決してブリュンヒルドは嫌いではない。あたしの命を守ってくれているあたしの剣だ。・・・だけど、フェンリルの剣なんだろう?もとは。持ち主には返さないとな」
「・・・ははは・・・」
ランスロットは小さく笑う。
「何がおかしいんだ」
「そうか、確かに勘違いをしていた。あまりその剣にいい感情がないのだと思っていたが・・・。そうか。そなたは、実は自分の手を離れるのが寂しいのだな」
「なっ・・・そんなこと、ないぞ」
「・・・きっと、ブリュンヒルドも、寂しいだろう。そなたと数多の戦いを共にしたのだから」
カストラート海で手にいれてからそんなに日はたっていないけれど、ここにたどり着くまでの戦火はかなりのものだった。
あれからソニアはブリュンヒルドをずっとふるいつづけていたし、ウォーレンに口を酸っぱく言われていたからか、丁寧に扱っているようにも思えていた。
「・・・違う。だって、きっとフェンリルと共にいた時間はあたしの何倍何十倍とあるに違いない。・・・返してあげないと」
「そなたにしか出来ないのだ。・・・ああ、違う、そういう物言いはやめよう」
そこで言葉をきるランスロットをソニアは真正面から見た。
「そなたが選ばれたものだ、とか真の心正しきものだ、とかそういう言葉はわたしは今は言わないことにしよう。・・・そなたはフェンリル殿を解放して、そして正統な持ち主にその聖剣を返しに来た。・・・それだけでいいではないか」
まだ、心のどこかで「聖剣に選ばれた者」として認識されることも、自分でそうだと口にすることもソニアは許していないのだ。
その気持ちもわからないでもない、とランスロットは思う。
反乱軍のリーダーというだけできっと彼女は本当にいっぱいで・・・
「でも、ランスロットみたいに、ブリュンヒルドのこと、スキって言えるほどスキになれてないかもしれない。そのままこの剣と別れるのは寂しいな」
「ほら、やはり」
「・・・・!!」
めずらしくランスロットが揚げ足とりのようなことをいうものだから、ソニアは真っ赤になって
「くそーっ!なんだか悔しい!」
と言ってそっぽを向いて歩いていってしまった。ははは、と小さく声を漏らすほどに珍しくランスロットは笑ってそれを見ているだけだ。
不器用だけれど、それでもやはりランスロットだって大人で、ちょっとしたやり方ぐらいはわかっている。
今は出来るだけ、この小さなリーダーが重たい荷物を背負わないように気をそらしてあげる方がよさそうだ。
彼女はここ最近抱えすぎているきらいがある。
「お守ごくろーさん」
ばさばさっと近くの木からカノープスが降りてきた。ランスロットはそれへほんのわずかに笑顔を見せて
「・・・いや。これくらい。カノープスの方がわたしよりソニア殿のお守を普段してくれているではないか」
「いーんだよ、俺のは趣味だから」
「趣味?」
「そ。俺、子供結構好きだから」
というのが嘘だということくらいランスロットもわかっているし、嘘だとわかってくれるということだってカノープス本人も知っている。
「それはともかく・・・どうやら、出てきたぜ、帝国軍が」
「何?」
「帝国軍らしい部隊が向かってきている。俺たちを迎え撃とうとしているのか、どういうつもりで出てきてるのかは聞いてみないとわからないけどな。おーい、ソニア!帝国軍が向かって来てるぜ!」

帝国軍の部隊を一蹴してほどなく、アイーシャ隊が合流した。
教会の脇に倉庫として使っている小さな建物があって井戸が近くにあった。その井戸の傍でちょっと喉を潤させてもらってからアイーシャは報告を始める。
このプリーストは仲間になったときはどうなることかと思われていたけれど、今はもう完全に反乱軍の大事な要員で、ソニアが知りたいことをソニアがわかる言葉で報告するのも慣れて来た様子だ。
「どうやらラシュディに強い魔法をかけられているようですわ。ラシュディ自らチャームの魔法をかけたらしい噂が流れています」
一体帝国軍がどこからやってきたのかと思えばフェンリルがいる城からだという。それではフェンリルが帝国軍の味方をしたのかというともちろんそうではなくて・・・。
「・・・強いチャームの魔法か。一体どうすれば解けるのだろう」
「困ったな。ウォーレンがいないとなると、そういうことに長けた人間が・・・」
そういいながらソニア隊とアイーシャ隊の視線はアイーシャに向けられた。
困ったようにアイーシャは苦笑して
「わたくしもあまりそういうことは存じませんが・・・。少なくとも生半可なことでは解けませんわね」
「解毒剤みたいなものはないのか」
ランスロットは無理とわかっていてもアイーシャに聞いた。
「病気とかではありませんし・・・。天空の三騎士ともあろうお方にチャームの魔法をかけることが出来るなぞ、魔道士ラシュディの力はかなり強大ですわね・・・。そうなると、わたくし達には対抗できるような魔力はありませんもの」
「ってことは、物理的なことで対抗しろってことか。どーすんんだよ」
呆れたようにカノープスが言う。
「魔法ってのはおっかねえなあ」
「そうですわね。・・・みなさまもウィッチが使う魔法を身体にうけたときの感触、覚えておられます?」
「・・・うー、くわばらくわばら」
そういってぶるっと震えてみせるカノープスは、実を言うとちょっと前に戦闘開始から終わるまで、ずっとウィッチのチャーム魔法をうけて身体の自由がきかなくなったのだ。終わったあとの彼の癇癪にソニアは大いに笑ったものだが、その分の戦力低下は否めなかった。ランスロットはあまりにソニアが笑うのでそのあとちょっとお説教をしたものだ。ソニアはあまりわからないけれど、ある意味男の沽券とかいうものに関わるとかなんとかで。
「でも、チャームの魔法うけたときって・・・前にビクターがうけたとき、オーロラにぶん殴ってもらったら解けたよ」
ソニアは不思議そうな顔でいう。ランスロットがソニアの部隊に編成される前のソニア隊のメンバーのことだ。その様子をみたことがあるのはソニアとカノープスだけだったから、カノープスは笑いながら言った。
「ああ、あれ、夫婦喧嘩みたいでおもしろかったな。ビクターがヘンドリクセンに切り付けようとしたときにさ、オーロラが・・・」
「杖で脳天ぶったたいてた」
くすくす、とソニアも笑う。
「そしたら、急に正気に返って。だけどオーロラはビクターが正気になったのを知ってたのにもう一発余分に叩いてた。ビクターにはナイショだぞ」
そういうと一同はどっと笑った。笑ったあとにはすとん、と憑き物が落ちたように静かになって
「で、フェンリルもぶっ叩くのか?」
カノープスが口火を切る。ソニアはいやそうに
「それしかないな。天空の三騎士と呼ばれるような人間と戦うことになるとは思わなかった。でも、急がないと。どうやら他に天界と呼ばれる場所があって、それぞれにいる残りの三騎士の二人にも・・・帝国軍の手が伸びているようだ。どうも、ここに残された帝国軍の様子を見ると、完全にあたしたちを破ろうとしているような構成とは思えない」
「足止めだな」
とランスロット。
「うん。・・・とかいってるうちに、また出て来たようだな」
そのとき、斥候役で出ていたバルタンのスチーブが飛んでくるのが見えた。遠くからの手振りでほんの2部隊ほどがこちらに向かっているとすぐにわかる。2部隊程度なら、とりたててソニア隊もアイーシャ隊も遅れはとらない。
「わたくしがいきますわ。ソニア様達は、これからのことを話し合っていてくださいませ」
「任せた。くれぐれも気をつけて。カノープス、悪いけど・・・」
「ああ、俺も様子を見てくる。戦いはじめたら、誰も見張りがいなくなるからな。お前らしかどうせ頭使える奴はいないんだし。それとギルバルドの部隊の様子もちょこっと飛んでみてくるぜ」
「話が早くてありがたいな」
ソニアはカノープスに笑顔をむけた。話がおわるやいなやカノープスは翼を広げて何度かはばたかせてから地面を蹴った。
それを見送ってからソニアはランスロット達と話を続ける。
「厄介だな、チャームってのも」
まっこうからフェンリルに向かうのは得策ではない。では他に何かあるのか、というと何もありはしない。
「やるしかないよね。それに、ブリュンヒルドがあるし。この剣だって、持ち主が操られていたら悲しいだろう。限られた人間しか動けないのだから、あたしがいくのが一番手っ取り早い」
「残念ながらそのようだ。逆に言えば、そなたが出来なければ誰も出来ないだろう」
「格好悪いけど、今回ばかりは逃げ道の確保はしておいたほうがよさそうだ」
「ああ。相手はなんといっても帝国の三騎士だ・・・ラシュディのチャームの威力次第だな」
おずおずとオリビアが言った。
「でも、杖で叩いた程度では解けませんよね、きっと」
「ああ。・・・剣で切り付けて、身体の痛みが高じれば解けるかもしれないが・・・難しいな。殺すわけにもいかないし、かといって手加減してなんとかなる相手でもないし」
「・・・やれるだけのことはやろう。それしか出来ない。そなたが言うように退路を確保して、あと、いざというときはフェンリル殿ご本人の傷も回復してさしあげることになるやもしらぬ」
「まあ、フェンリルの気がついたって・・・あたし達に対して、どういう感情をもっているのかは保証出来ないけどな。もしかして、せっかくチャームの魔法をといても、敵対されないとも限らない。だから、どっちにしたって退路は必要なんだ。あたし達はフェンリルを倒しに来たわけじゃない。ラシュディの動きを追っただけで・・・そもそも天界に来てどうこう、なんて考えははじめはなかったんだし」
「あら」
とオリビアは声をあげて、それから小さく笑ってみせた。
「きっと、大丈夫ですよ」
「なんでそんなこと言う?」
「おとぎばなしでは、悪い魔法使いに魔法をかけられて眠ってたお姫様って、目覚めた時に目覚めさせてくれた人を好きになるものですもの。きっと、悪く思われることはないと思いますわ」
「・・・可愛いことをいうな、オリビアは。なんていうか、悪いこと出来ない人間っぽいね」
びっくりしてソニアは自分の部隊のプリーストを見た。そうでしょうか、といいながらオリビアはテスを見る。テスはどうしたものか、という表情で憮然としていた。
「ま、確かにね。それくらいの楽観はしないと、息苦しくなるものだし。ね、ランスロット」
「・・・まあ・・・そうともいうけれど・・・」
複雑な表情でランスロットは無理矢理笑ってみせた。
「期待はしたいがな。だが、駄目だったときのことを考えておかなければいけないだろう。・・・ああ、あれを。もうギルバルド達も戻ってくるな。また多少情報が増えるに違いない」
西の方ではアイーシャ達が戦っている。そしてギルバルド達が東の方からやってくるのが見えた。
「天空の三騎士か。・・・・楽しみだ」
「ソニア殿」
「わかってる。遊んだり打ち合いを楽しんでいる余裕なんて、ないに決まってるんだから。・・・生きることだけを考えるよ」
「そうしてくれ」
「ランスロットは下界でも天界でもうるさいんだから」
「そなたも下界でも天界でも手を焼かせてくれそうだ」


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モドル

とりあえず前回とこのオルガナについてはゲームにそった話をたどっていく、という感じで進めています。
「Palusation」みたいなショートを書く為には、本編にそって書くべきときに書かないといかんですからね。
なかなかラヴァーズ小説にならなくてゴメンナサイ。