加速度-5-

「また洗濯しなきゃいけなくなったじゃないか!」
「明日すりゃいい」
「明日はムスペルムに行くんだろ!」
「誰かにやらせりゃいい」
「あたしがやるって言ってもぎとってきたのに!」
ソニアは小型犬のようにぎゃんぎゃんと木の上でカノープスに噛み付いていた。それをあまり笑いもしないでカノープスは相手をしてやる。空はもう夕暮れで、大層橙色が濃く、雲は何故だか黒ずんで見える様子だった。
ひとしきり吠え終わったらソニアは静かになった。カノープスはそこでやっと、オーロラが何をソニアに言いにいったのかを聞くことが出来た。あまり元気がない様子でぽつりぽつりとソニアはカノープスに話す。
それをひととおり聞き終えて、ああ、本当だ、オーロラに対して怒る筋合いは本当になくて、ソニアが今苛々しているのは、やっぱり別のことで気持ちが落ち着かないのだなあ、とカノープスは心の中でつぶやく。
ざざ、と風が吹くと、木の枝が軽く揺れる。
ソニアは大事そうにランスロットのマントにくるまったままで、右手でカノープスの腕を掴んでいた。もちろん、落下したら命はないような高い場所にいるときは、カノープスもソニアをきっちり支えてくれている。
「八つ当たりして、ごめん」
「それで気が晴れるならいいけど、原因がよくわかんないから晴れないんだろ」
「・・・ん」
「お前、本当に不器用だよなあ。あんなに戦のことはなんでも出来るのに、どうして自分が思ってることがなんなのか把握できないんだよ」
「カノープスは、そういうことって、ないのか」
「昔は、あったかな・・・」
「じゃあ、それと同じだ。あたしは、子供だから・・・」
小さく口を尖らせて、ソニアは目を伏せた。しばらく沈黙が訪れた。夕焼けというものは長くは続かない。辺りが闇に染まる前にはもう戻らなければいけないことを、何も言わなくてもソニアも知っていた。
やがて、カノープスが先に言葉を出した。
「どうする。明日、本当にそんなでムスペルムに行くのか」
「うん」
「そういうときは、休んじまえればいいのにな」
「まさか」
ソニアは小さく笑顔を見せる。
「あたしは反乱軍のリーダーだぞ」
「でもなあ」
「いいんだ。反乱軍のリーダーになるって決めたから、それをやり通したい。そして、何があってもあたしは前線にいたいんだ」
「なんで」
「あたしには、何もないから・・・言葉だって上手くないし、身分だってないし・・・だったら、戦う姿を見せるしか、それしかみんなにわかってもらう手立てはないから」
それは本当だけれど、この少女の口から聞くには悲しい言葉だった。カノープスはなんといっていいかわからずにソニアの次の言葉を待つだけだ。
「自分で、そう決めた。だから、大丈夫だ」
「・・・反乱軍リーダーとしてはそうかもしれないんだけどな、確かに。でも、それ以前にお前は」
「あたしは、反乱軍のリーダーらしくしろ、ってうるさく言われるのは嫌いだけれど、自分が反乱軍のリーダーだってことは嫌いじゃあ、ないんだ、カノープス」
意外な言葉にまたカノープスは困ってしまう。それに気付かずソニアはもうすぐ暗闇に飲まれてしまいそうな夕焼けをみながら
「だって、反乱軍リーダーにならなかったら、カノープスに会えなかったじゃないか。みんな、そうだ。あたしは、とても、幸せ者だ」
「ソニア・・・」
「だから、そうでいたい。何があったって、今日、どんな風に心が乱れたって、明日の朝になればこんな自分はどこかに消して、反乱軍リーダーとして、みなの前に立ちたいんだ。最近、そう思えるようになった」
その気負いを打ち消す必要があるのかないのかはカノープスにはわからなかった。
この少女に反乱軍リーダーであれ、と誰もが思いつづけているけれど、それは本当は誰もが「そうでいて欲しい」からそうあるだけで、彼女は誰もいないで一人きりだったら、きっとそんな風に自分を律することは出来ないだろうに。
(まさか、な)
女性である以前に反乱軍リーダーでありたいという気持ちの強さで、体の機能にまで影響しているのだろうか。
そんなことを思ったけれど、それが違うことはすぐにわかって、カノープスは自分のムリな思い込みに苦笑した。
シャロームについたときには既に止まっていた、といっていたではないか。それでは。
シャロームまでの道中に、きっと、反乱軍リーダーでい続けるよりも辛いことが彼女にあったのだろう。
それを聞くのは自分の役目じゃあ、ない。
何故かカノープスはそんなことを思ってしまう。
今ここにいるソニアに手を差し出してやりたいとは思うけれど、彼女の過去を背負いたい、とまでは思えない。
自分がソニアの力になれることは、本当はそんなに多くはないのだろうな、となんとなくカノープスは思った。

夕食の席では半数の兵士が食卓につき、残り半数は外で見張り番をしている。
今日は天空の三騎士の一人であるフェンリルを仲間になった、ということで女性陣が腕をふるって子羊肉のシチューやら、もともとはパン屋の娘だったハイネの指導のおかげで焼きたてのパンも振舞われた。
そうっとソニアとカノープスが薄汚れているけれどだだっ広い食堂にはいると、みなは心得たように「おかえりなさい」と口々に彼らに声をかけて、多くは聞かない。これに関してはソニアはみなに感謝しなければいけないな、と心から思った。
主賓状態になっていたフェンリルは、ノルンとアイーシャに両脇を固められて天界についていろいろと享受している様子だ。
きょろきょろとソニアは辺りを見回してランスロットがいないことを確認した。
あの律儀で働き者の聖騎士は、こんなときでも自分は食事は後でいい、と見張り兵士達の様子を見に行っているに違いない。
二人は今日の食事当番になっている女性兵士達から食事を載せたトレーをうけとって席を探した。広いけれど椅子の数自体は限られているのが、この部屋の悪いところだ。
「ソニア様、こちらへどうぞ!」
空いている席をぱんぱん、と叩いてソニアを呼んでいるのはエンチャンターのテリーで、彼もまた古株の一人だ。最近彼はよくオハラとサムライのゾックと3人で見張り番の組み合わせになることが多い。そのせいか、テリーの前にはオハラが座って食事をしていた。
「俺は!?」
「カノープスさんは、あそこが空いてますよ。若くてピチピチのかわい子ちゃん達がいっぱいいるじゃないですか」
「やだよ!何がかわい子ちゃんだ。あいつらに今日みっちり色々教えてやってたとこじゃねえか!」
と、ホークマン二人組みが座っているあたりを指差すテリーを蹴っ飛ばす真似をするカノープス。じゃな、とソニアに言うと、調度あいていたギルバルドの側の席へと彼は歩いていく。
テリーの隣にソニアが座ると、斜め向かいのオハラがにこ、と笑顔を見せた。
「明日、オハラを連れていくんですってね」
テリーがソニアを見る。
「ああ」
「・・・私が教えられることは、すべて教えました」
「わかっている。テリー、感謝してるよ」
「ごちそうさまでした。お先に」
ちょうどソニアの反対側で食事をしていた新兵が一礼をして席をたった。まだ実戦経験がない新兵達は、早く食事を終えて見張り番を交代しなければいけないのだ。
「オハラ、明日はよろしくな」
「はい!精一杯頑張ります。いたらないとは思いますが、よろしくお願いいたします」
「そうかしこまらなくていい」
そういってソニアはパンをちぎった。
「テリーは留守番頼んだぞ。まあ、テリーとゾックの部隊に、アッシュにギルバルドが残っていてくれれば戦力的には問題がないだろうし。すまないな、毎度毎度留守番で」
「いえ。それぞれ役目がありますから」
エンタンチャーであるテリーは、反乱軍で唯一のゴーレムの操り手だ。彼とゾックが組んでいる部隊は、前衛にはゴーレム、後衛にはゾックとテリー、そして新兵のウィザードがいる。この部隊は本拠地の防衛をすることに重きをおいている部隊だ。
「本当はドラゴンを仲間にする方がゴーレムより戦力はあがると思うのですがね」
「仕方ない。あいつら、結構食べるし、うちにはドラゴンマスターがいないからな。本当はオハラになってもらおうかと思っていたのだけれど・・・今度はドラゴンを買う金がない。まあ、フェンリル様に一体ついてきてくれてありがたいのだけれど」
ははは、とソニアは困ったように笑った。
そのとき、トレーをもってうろうろしている男にソニアは気付いた。ノーマンだ。テリーもそれに気付いたらしく
「ノーマン、ここ空いているぞ」
と、オハラの隣を指さした。オハラはびっくりして
「テ、テリーさんっ・・・」
「ん?なんだい、オハラ」
「あの・・・」
別にとなりで食事するくらい、いいだろうに。ソニアはそう思いながら困っているようなオハラを見ていた。
「ノーマン、こっち」
テリーはおかまいなしでもう一度ノーマンに呼びかける。ノーマンはそれに気付いたように近づいてきたが、途中でテリーが指差している席がオハラの隣だとわかると足が止まってしまった。
挙句に、その席の前にはソニアがいるではないか。
「?どうした?ノーマン」
「・・・い、いや、あの、あっちにも席があるからあっちにいく・・・気にしないでくれ」
「?おかしなヤツだな」
ソニアはなんだかノーマンのその様子がおかしくなって、笑い出しそうになるのをこらえる。
(なんだ、本当にノーマンは子供みたいで可愛いな)
なんてことを考えているのは内緒だ。オハラはほっと安心したように息をつく。テリーはそれに気付いて
「なんだ、オハラ、ノーマンのことが苦手だったのか」
「あ・・・はい・・・。実は・・・」
「ノーマンは、悪いやつじゃないぞ」
ソニアはシチューをすすってオハラに言った。その言葉にびっくりして二人はソニアを見つめる。
「ちょっと、子供っぽいけど。あたしよりずっと年上のくせに。でも、あたしもノーマンみたいだから、なんとなくわかる」
「・・・そ、そうですか・・・?」
どういう意味だろう?とオハラはテリーをちらりと見るけれど、テリーもそれはわかるはずもない。困ったようにオハラは
「あの、でも、悪い人だと思っているわけではありません」
とはにかみながら言った。おや、とソニアはその言葉に反応して、オハラを見ながら羊肉を口に放り入れた。
「口は悪いけれど・・・ちょっと荒っぽいのですけれど、本当は優しい人なんだと・・・思います」
「そうか!」
意味もなくソニアは嬉しそうに笑った。それがますますテリーとオハラにとって、一体どうしたんだろう、と思わせたけれどそんなことはまったくソニアは気にもしていない。と、そのとき
「そこは、空いているかな」
「はい、空いています」
「!!」
ソニアの背後からランスロットの声がした。驚いて振り向くと、トレーをもってランスロットがそっと近づいてきているところだった。
「ランスロット」
「ああ、ソニア殿もお食事中だったのか」
「う、うん」
「向かい側、失礼する」
そういうとランスロットはオハラのとなりにトレーをおいて、そっと椅子をひいた。ソニアはなんだか緊張してきて慌しくパンにバターを塗る。なんだか、まともに顔が見れないのはどうしてだろう?
「どうかしたのか?」
「あ、ううん。なんでもないぞ」
「そういえば、さっき部屋に寄ったのだけれど・・・」
「あ」
ランスロットのマントは、今はソニアの部屋にある。明日早起きして洗おうと思って持ち帰ったのだ。
既にそれはソニアの涙で濡れていて、しかも木の上でソニアがくるまっていたためまたも汚れてしまっていた。
「すまない、ごめん、あれ、またあたしが汚してしまったんだ。また洗ってくる!」
「・・・そうなのか?・・・」
ランスロットは不思議そうな表情でソニアを見た。少なくともウォーレンの部屋で会ったときは洗濯が終わっていたはずなのに、一体自分のマントに何をしたんだ、このリーダーは、といぶかしんでいる様子だ。かくいうソニアもうまい言い訳が考えられないものだから、二人は妙な会話で妙な表情になる。
ソニアは困ったように、しきりにパンを千切っては口に運ぶ。そっとランスロットを伺うと、彼は何を話すわけでもなく静かに食事を始めた。隣に座っているオハラが手をとめて
「明日はよろしくお願いします。足手まといにならないように精一杯頑張ります」
とランスロットにも挨拶をした。既にウォーレンの部屋に呼ばれたときに十分すぎるほど挨拶をしていたけれど、こうやって改めて食事を共にすると、ちょっとまた違う気持ちになるのだろうか。
シチューをすくう手をとめてランスロットは穏やかにそれへ返事をする。
「ああ、こちらこそ、よろしく。何かあったら遠慮なく聞いて欲しい。教えられることはなんでも教えるし、きっと君から教わることも何かあることだろう」
その受け答えはとてもランスロットらしくてソニアはなんとなくいたたまれなくなって自分のシチューの肉をフォークでつついていた。
あまり自分の気持ちについてソニアは整理できなくてカノープスに八つ当たりをしてしまったけれど、少なくともひとつだけわかっていることがある。ランスロットがここに残る、と言ったこと。あの言葉は聞きたくなかったのだ。それがどんなに彼らしい、反乱軍の一員として正しい言葉でも。
それが正しくて、そして彼らしければ彼らしいほど、ソニアは自分が何か子供のような気がしてきて、ランスロットの正面で食事をとっているのが恥かしくなって来てしまう。
一体、あたしはどうしたんだろう?
シチューを一気に口に流し込む。それからちぎったパンを水で無理矢理喉に押し込んで、食事時間というにはあまりにも短い時間でソニアは立ち上がった。
「早いですね」
テリーが驚いた表情で立ち上がったソニアを見る。
「うん、ちょっと色々やることがあって。それじゃあ、また明日。オハラ、よく眠っておいてくれ」
「はい、わかりました」
ランスロットは「一体、何をやることがあるんだ?」といいたそうな顔でソニアを見ていたけれど、がたがたと椅子をテーブルの下におしこんでトレーをもっていくソニアに何も声はかけなかった。

一体、今日は何が起こったのだろうか。
ソニアはそんなことを思いながら、ベッドの上で丸くなっていた。
心に何かがひっかかっていることは事実で、どうにも気分が悪い。
いくつかのことは自分でもわかっていた。
ランスロットが地上に残る、と言ったことがまずは気に入らなかった。
それでイライラした自分のことが更に気に入らなくて。
ノーマンとオハラの話を聞いたけれど、自分にはよくわからなかった。
あたしには早すぎる、とランスロットが言ったことはどういう意味だ?
それに、一体なんであたしがオハラを構うことをノーマンは嫌そうに言うんだろう?
いろんなことが頭の中で回る。
眠れない夜は今までたくさんあった。
それは、いつだってあの逃亡生活を思い出して、あるいは、何の理由もなく突然目が冴えて何をしても眠れない、のどちらかだった。
でも、今日のこれは違う。
「もー!早く寝て明日早起きしないといけないのにっ!」
ソニアはごろごろとベッドの上で何度も体を横に往復するように転がっていた。
体は疲れているはずだ。オルガナにいって一暴れしてきたわけだし、戻ってきてもなんだかんだとソニアは今日一日ばたばたしていて決してゆっくり休んだというわけではない。
それでも、なんだか落ち着かない。
多分、言葉にすると「心が落ち着かない」というのが正解なのだろう。
ふと、横になった状態で、部屋の椅子の上にたたんでおいたランスロットのマントに視線を移す。
それにくるまって、木の上で泣いてしまった。
カノープスはあまり深く追求はしなかった。それはとてもありがたかったけれど、だから逆にソニアは自分で自分がどうなっているのかを考えないで途中で思考が止まってしまったように思える。
「ノーマン、食事くらい一緒にしたっていいのにな」
ふと、食堂でオハラの隣に座らずに逃げてしまったノーマンを思い出した。
そのとき、ソニアは突然難しい顔になる。
「・・・でも、もしかして、あたしも一緒なのか・・・?」
ついつい、ランスロットの正面で食事を続けるのが恥かしくなって逃げてしまったけれど。
それはノーマンがオハラの隣に座れなかったのと似ているような気がした。
そっとベッドからソニアは降りる。
一体、これはどうしたことなんだろう。
わからないことをいつもカノープスやランスロットは教えてくれた。でも、これはきっと二人に聞いてもわからなくて、そして。
二人には聞けないことのような気がする。
そっと椅子の上に置いた、自分の涙が染みてしまった布を手に取った。そのとき、自然にソニアの口から言葉がこぼれる。
「なんてことだ」
それから、もう一度。
「一体、なんてことだ、あたしは」

ノーマンはオハラが好きなのさ

「そんな答えを、教えるな、ランスロット」
薄汚れた部屋には、小さな机と小さなテーブル。そして壁には回りの額部分が欠けている鏡がぶら下げられていた。ドレッサーなんていう上等なものはない。ランスロットのマントを手にとって、ぎゅ、と握ると、自分の姿が鏡に映る。それから自嘲気味につぶやいた。
「・・・どうか、してる」
カノープスの前で泣いてしまったのは、きっと。
カノープスの言葉で、もう自分はとっくに気付いていたのだろう。
反乱軍リーダーとしては、ランスロットに残ってもらうことは悪くない。いや、逆にいいことなのかもしれない。
でも。
どうした方があたしにとっていいことなのか、だって?
そんなの、決まってる。
ランスロットが、傍にいてくれるのが、いいことに決まっているんだ。

反乱軍リーダーとしてはそうかもしれないんだけどな、確かに。でも、それ以前にお前は

鏡に映っている自分は、小さな少女だった。
ソニアはぼんやりと、ああ、明日になればあたしは「ただの」反乱軍リーダーだ。
そうでありたいし、きっと、そうなる。そういう自分のことは知っている・・・そんなことを思っていた。
朝が来て、顔を洗って、服を着替えて・・・それから、ランスロットからもらった紐で髪を結ったら、自分は反乱軍リーダーになる。
それはまるで儀式のようなものだった。
絶対、それは譲れないし、そうでありたいと思っているから。
だから、気付いてしまった今は許してくれ。
「なんていうことだ。本当に。なんてことなんだ、これは」
そうつぶやいた途端、涙で濡らしてしまった大事なマントにまた新しい染みが広がった。
こんな気持ちは知らない。知らないし、本当はなくしたい・・・ような気がする。
「早く寝ないと」
そうっとそれを椅子にかけて、ソニアはベッドに身を放り投げた。床で眠るにはこの部屋はちょっとスペースが狭すぎる。
壁の方へ体を向けて目を閉じた。
目を閉じたって心の蓋を閉じられないということは百も承知だったけれど、それでもそれにソニアは期待をしてしまう。
夜は駄目だ。夜は人がおかしくなってしまうから。
やがて、何度も何度も自分に言い分けをしながら、ソニアは少しづつ体の力が抜けていくことに気付く。
明日目覚めたときに、何かが変わってしまうのだろうか?
それを考えることは恐かった。

・・・決まっているんだ。
眠りにつく寸前にソニアは自分の中の声を聞いた。
意識が混濁して、ふうっと眠りの世界に体がひき込まれていくのを感じながら、小さな小さな声がどこかで聞こえる気がする。
ランスロットが、傍にいてくれることが、自分には必要なんだ。理由なんて、いらない。
ああ、こんな自分は知らない。こんな自分は知らない。こんな自分は知らない。
明日目が覚めたら、あたしはどうなってしまうのだろうか。
最後に感じたのは、今まで知らなかった何かに対する恐怖に似た感情だった。それすら、目が覚めたら覚えていないのだろう。
そうして、ソニアは深い眠りについた。目覚めの朝がくることを恐れながら。


Fin

←Previous



モドル

やっとここまでこぎつけました。ちらほらと意識したときがあったはずなのに、ここまで明確に自分にとってのランスロットを考えてしまったのは今回が初めてなのだと思います。なんでそのためにこんなに色んなエピソードをこなさないといけないんだ、という感じなんですが、うちのバカオピ子にはこれくらいのことがないと自分のキモチを向き合ってもらえないようです。
で、相変わらずランスロットはそんなことはわからない状態ですが、彼もこれから始動!デス。
次はもちろん、目覚めの朝(??)からムスペルムへ。残念ながら、反乱軍リーダーモードでガリガリいかせていただきます(笑)